2023年8月号掲載
GAFAも学ぶ!最先端のテック企業はいま何をしているのか 世界を変える「とがった会社」の常識外れな成長戦略
著者紹介
概要
「シリコンバレーは、もはや最先端ではない」。世界のテック企業の動向に精通する著者はこう語り、革新的な取り組みで世界の先頭を走る中国企業を紹介する。ユーザーに「楽しい!」と思わせる仕掛けを施す、ライブ配信でシームレスな購入の機会を提供する、等々。最先端テック企業の戦い方を、豊富な事例から広く学べる1冊だ。
要約
中国テック企業のビジネスモデル
シリコンバレーは、もはや世界のテック企業の最先端ではない。実際、GAFAをはじめとするシリコンバレーのテック企業は、頻繁に中国の最先端テック企業を視察に訪れている。
そんな中国企業における最先端の事例とは?
サービスの根幹に「エンターテイメント」がある
今や世界の最先端テック企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)を達成し、さらにその先を行っている。彼らに共通するのは、「ユーザー」を主役にしたカスタマーサービスを変革のフロントに置いていることだ。
その根幹には、単に商品やサービスを購入してもらうだけでなく、ユーザーに「楽しい!」と思わせる仕掛けがある。憧れのインフルエンサーと直接つながれる高揚感、ランキング上位を目指す競争心…。こうした感動体験をユーザーにもたらす「エンターテイメント」の要素が必ずあるのだ。
「楽しい」から、そのサービスを利用する頻度とアクセス時間が増えていく。その分大量のユーザーデータが収集・畜積されるので、ユーザーの行動特性を可視化でき、サービスが改善され、ユーザー体験がさらに向上する。
このようなループを自動で高速回転させることで、これらのテック企業は「ユーザーが主役」のサービスを日々進化させているのである。
エンターテイメントが「ヒト消費」を加速させる
このように、「エンターテイメント=ユーザーにとっての楽しさ」の追求によって大量のユーザーデータを獲得し、サービスを急成長させているテック企業には、ある共通の特徴がある。
その特徴を、私はEX(エンターテイメント・トランスフォーメーション)と呼ぶ。このEXを実践している最先端企業の1つが、中国の小売ECプラットフォーム「ピンドゥオドゥオ」だ。同社は、EC利用者数で「中国ECの巨人」アリババグループを抜いた新興企業だ。
同社の成功のポイントは、一定の購買者が集まることによって割安に商品を買うことができる「共同購入」にSNSを組み合わせ、エンターテイメントをつくり出した点にある。
WeChatをはじめとするSNSに、例えば「24時間以内に3人で買うと60%オフ」など、友人や知人に情報をシェアすることで、仲間を集める仕組みを設けた。さらには、ピンドゥオドゥオの側からも「○○さんもこれを買っていますよ」などと、スマートフォンに通知が送られてくる。
仮にまったく知らない商品であっても、「友だちは今これを買いたいんだ」と誘われている感覚になり、共同購入に加わりたくなってしまうのである。そして、実際に共同購入に参加し、成立したらその友人から「ありがとう!」とメッセージが届き、さらに交流が深まるという、単なる買い物を超えた体験が得られる。