2023年8月号掲載

定年前と定年後の働き方 サードエイジを生きる思考

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著者紹介

概要

定年前と定年後をいかに働くか? 50代以降のシニアが直面する問いについて、人材育成・キャリア形成の研究者が考察。高齢期を「人生で最も充実した幸福な時期」とするための働き方・思考法を、理論と実例の両面から説いた。人生100年時代、本書が示す答えはシニアへの見方を変え、彼らを組織の力とするためのヒントにもなる。

要約

幸福感のU字型カーブ

 定年前と定年後の働き方は、個人の思考1つで大きく変わる。50代以降のシニアにとって、働き方の思考法のカギを握るものは、幸福感だ。

 幸福感と年齢の関係には謎が多い。個人の幸福感は20代・30代では高いが、その後低下し40代後半で底をうつ。そしてその後は年齢が上昇するにつれ、幸福感も上昇し続ける。この年齢と幸福感の関係を示すカーブを「U字型カーブ」と呼ぶ。

 高齢期に加齢することは身体の衰えなどを伴うため、むしろ幸福感は低下していくことが想像される。にもかかわらず、なぜ50代以降、年齢の上昇に伴って幸福感も上昇し続けるのか?

 この謎は「エイジング・パラドックス」と呼ばれる。実はエイジング・パラドックスこそ、シニアの働き方の充実度を左右するヒントなのだ。

幸福感とは何か

 そもそも幸福感とは何か?

 幸福は、一般的には、ハピネス(happiness)、サティスファクション(satisfaction)、ウェルビーイング(well-being)、エウダイモニア(eudaimonia)という4つの言葉で使い分けられている。

 ウェルビーイングとは、他の3つの要素を含む、幸福感を表す包括的な考え方だ。3つのうち、サティスファクション(生活評価)とは、日常生活への満足度である。ハピネス(感情)とは、喜びや楽しみなど、いわば快楽を示す心の状態である。

 そしてエウダイモニアとは、人生における意義や目的意識を意味する。意義や目的を考えて生きることは、自己実現など人生の充実につながる。意義や目的による人生の充実という幸福が、エウダイモニアの意味するところなのだ。

エウダイモニアの実現が、シニアの働き方思考法

 ただ、この3つの要素にはバランスがあるのではないだろうか。相対的にいえば、シニアになると様々な責任や重圧から解放され、エウダイモニアを追求できる比重が高くなる。お金や快楽も大事だが、人生には意味も大事だということだ。

 では、シニアの働き方において、エウダイモニアを追求し幸福感を高めていく具体的な思考法とは、どのようなものか?

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