2023年11月号掲載
首都防衛
- 著者
- 出版社
- 発行日2023年8月20日
- 定価1,012円
- ページ数222ページ
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著者紹介
概要
首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山噴火。これらの大災害は、ほぼ同時に起こるおそれがある! 東京都知事の特別秘書として都の防災施策を見てきた著者が「大連動」の可能性に言及。単体の災害を想定するだけでは不十分と警鐘を鳴らす。関東大震災から100年、最悪の事態を想定し、自分なりに備える一助となる1冊だ。
要約
最悪のシミュレーション
今から320年ほど前、前代未聞の大災害は起きた。江戸時代の1703年、現在の関東地方を急襲した「元禄地震」だ。最大震度7に相当する強い揺れが起き、死者は1万人を超えたと伝えられる。当時の日本の人口は3000万人弱。現在の人口で表せば死者は4万人を超えるレベルだ。
しかし、江戸時代中期の我が国を襲ったのは元禄地震にとどまらない。4年後の1707年、今度は駿河湾から四国沖の広い範囲で大きな揺れが発生した。マグニチュード(M)8.6と推定される「宝永地震」は南海トラフの巨大地震で、最大震度7に達したとみられる。海岸部では最大で約15mの大津波が発生し、現在の大阪を中心に死者は2万人以上と伝えられている。
また、宝永地震のような南海トラフの大規模地震が発生した後には、周辺の地殻に加わる力が大きく変化する。発生後に地震や火山活動が活発になる場所が現れ、宝永地震発生の翌日にはM6.5程度の地震が富士山の東麓で発生。そして、49日後には富士山の噴火活動が始まった。
大量の火山灰が飛来し、地震による被害が少なかった関東平野でもダメージが生じた。この「宝永大噴火」は2週間も断続的に続き、江戸にまで火山灰は降り積もっている。
元禄から宝永年間に続発した巨大地震と富士山の噴火は何を物語るのか。それは、2つの大地震と富士山噴火が連動し得るという恐怖だ。
あえて名をつけるならば、「大連動」と言ってよいだろう。それが今から320年ほど前、現実に起きた意味は決して小さくはない。
では、人口が当時の4倍超に増加し、列島のいたるところで人々が暮らすようになった現在の我が国で首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山の噴火という「大連動」が生じたらどうなるのか。交通網やインフラが全国に行き渡り、物流が東西の垣根なく展開される今日に発生すれば、その被害は当時とは比べものにならないほどのインパクトを与えるだろう。
首都直下地震の「本当の恐怖」
政治・行政機能が集中する東京に大地震が襲来すれば、首都機能に甚大な影響が生じる。
当然ながら、首都の経済機能は大きい。国土交通省が2019年にまとめたデータによると、上場企業の本社所在地は東京が1823社(全国の5割強)。外資系企業は7割にあたる約2400社、工場の数は約2万7000所で、就業者は800万人超。
東京都は2022年5月に公表した被害想定で、直接被害額を21兆5640億円としている。だが、これは建物やインフラなどの直接的な経済被害だけを推計したもので、企業の生産活動やサービスの低下といった間接的被害を含めれば、日本の国家予算に匹敵するダメージを受ける可能性がある。