2024年3月号掲載

特権と不安 ――グローバル資本主義と韓国の中間階層

Original Title :PRIVILEGE AND ANXIETY:The Korean Middle Class in the Global Era (2022年刊)

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著者紹介

概要

グローバル化に伴う、格差の拡大と中間階層の分裂。今日、多くの国で見られるが、韓国のそれは独特のものがある。上流中産層が密集する大都市「江南」、そこでの生活がもたらす経済的・社会的な“特権”、そして多数の一般中産層にもたらされる“不安”。韓国で進む新たな不平等構造の実相に、都市や消費の視点から切り込む。

要約

不平等構造の変化

 現在、韓国で最も深刻な社会問題は、経済的・社会的不平等と、これと並行して進行する中産層(中間階層)の縮小と不安定だ。

 経済的な分極化の進行によって、韓国社会は少数の富裕層と多数の低所得層に分かれ、中間層は次第にその規模が縮小し、不安定な経済状況に置かれるようになった。

分極化の2形態

 韓国の不平等は、2つの分極化の形態をとって現れた。最初の形態は、所得上位層と残りの人口の間に広がる格差である。

 これは新自由主義時代にグローバルに現れる現象でもある。2008年の世界金融危機の余波により米国で起きた〈ウォール街を占拠せよ〉運動以後、〈上位1%対下位99%〉というスローガンが流行するようになり、このスローガンは他の多くの社会にも共鳴した。韓国はそれ以前に1990年代後半以降、急速な所得の分極化過程を経験している。

 2つ目は、正規雇用と非正規雇用、そして大企業の労働者と中小企業の労働者の間に広がる所得の格差だ。これにより、労働者階級と中間階級の間の境界線が曖昧になった。例えば財閥企業の正規雇用の生産労働者は、中小企業のホワイトカラーよりも高い賃金を受け取っている。従って、職業の代わりに、どの規模の企業に、またどの雇用形態で就業しているかが一層重要となった。

不動産による資産形成

 だが、韓国の富裕階層の形成と中産層の内部分化を正確に理解するためには、職業と所得分配に現れた不平等だけをみていては不十分である。

 なぜなら、韓国で上流層、または上流中産層に入るにあたっては、職業を通して得る勤労所得以外の不労所得が重要な役割を果たしてきたからだ。特に、不動産による資産形成は、多くの富裕層家庭に最も大切な物質的基盤を提供した。

 資料によると、1963年から2007年の間にソウルの地価は1176倍に上昇した。同じ期間で都市労働者の実質所得は15倍に増加した。従って、ソウルの地価は実質所得の70倍以上上がったというわけである。

 だが、不動産によって恩恵を受けたのは、財閥や権力者だけではない。経済的な余裕がある多くの中産層家庭は、1980年代以降のマンションブームで財産を増やすことができた。

 2000年代になると、マンション市場で収益を多く得る人々の中には、大企業の高所得サラリーマンや高度な専門職に就いている人が増えた。多くの場合、彼らの家庭の経済的な基盤は、職業を通じて得る高額の賃金より不動産投資で得る所得がより大きな比重を占める。韓国の上流中産層は、不動産蓄財を通じて形成されたのである。

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