2024年3月号掲載
マインドフル・ボディ ハーバード大学の人気教授が教える意識で身体を変える方法
Original Title :THE MINDFUL BODY:THINKING OUR WAY TO CHRONIC HEALTH (2023年刊)
- 著者
- 出版社
- 発行日2023年11月30日
- 定価1,925円
- ページ数294ページ
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著者紹介
概要
人は「マインドフル」である時、制約から解放され、自由な精神と健康を得ることができる ―― 。“マインドフルネスの母”と呼ばれるハーバード大学教授が、長年の研究を基に、心と身体の驚くべき関係を解明。生存年数や記憶力、病気の進行などに、心の状態が大きく影響を与えることが、興味深い事例とともに示される。
要約
マインドレスからマインドフルへ
「マインドフルネス」という言葉は、1970年代の私の研究以来、至るところで使われている。ただ、ほとんどはマインドフルネスを単に心の状態として捉え、瞑想と関連づけられることも多い。
しかし、マインドフルネスは「積極的な気づき」というプロセスであり、特に瞑想を必要としない。
私がマインドフルネスという言葉を使う時は、身体の状態にも言及している。心の状態こそが、健康状態を決める最も重要な要素だと信じているからだ。それは単なる「心と身体の調和」ということではない。心と身体は1つのシステムを成し、人間に起こるすべての変化は基本的に「心理レベル」と「身体的レベル」で同時に起きている。
この「心と身体の一体性」という考え方を受け入れると、健康をコントロールできるようになる。
ルールは恣意的なもの
心が健康を決めるカギであることを理解するには、まず、やるべきことがある。それは、誤った思い込みを捨てることだ。例えば、私たちはルールに従う人を称賛しがちだが、ルールにもっとマインドフルに向き合えば、それらがしばしば恣意的なものに過ぎず、意味をなさないことに気づく。
健康に関するルールについて言えば、それらの多くが過去に作られたもので、その時から医学は進歩している。以前は患者によって個人差があることに十分な注意が払われておらず、例えば、医薬品の治験は主に若い男性で行われていた。従って、高齢の女性には問題を引き起こすことが多かった。薬品は高齢女性の体内により長くとどまるからだ。現在は当然ながら、年齢、体重、性別を考慮して薬量を決めている。
「ボーダーライン現象」の知られざる害
また、患者は、ある基準にぎりぎり達しているということで病気と診断される。
人間は厳格な線引きを考え出し、それを「マインドレス」(マインドフルの逆。無自覚)に適用する。それによって、はるかに劇的な変化が人の生活にもたらされる。そのダメージを、私は「ボーダーライン現象」と呼ぶ。
私は、糖尿病の診断におけるボーダーライン現象を検証したことがある。「前糖尿病(糖尿病のリスクがある)」と診断される血糖値の閾値を境に、そのわずか下とわずか上の人を比較したのだ。
何人かの内分泌学の専門家に尋ねると、全員が「ヘモグロビンA1c(血糖値の指標)が5.6%の人と5.7%の人に大きな差はない」と答えた。しかし、標準的な医療の規定では、A1c5.7%未満は「正常」、5.7%以上は「前糖尿病」とされる。
こういう「ラベル貼り」の問題点は、これがまるで決定的な診断のように聞こえることだ。