2024年4月号掲載

新・宇宙戦争 ミサイル迎撃から人工衛星攻撃まで

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著者紹介

概要

宇宙を制する者、戦争を制す ―― 。カーナビやATM、電車の運行まで、我々の生活はGPS(測位衛星システム)などの「宇宙資産」に大きく依存している。それが害されれば影響は甚大だが、今、宇宙攻撃の危険が高まっている。各国は宇宙空間での覇権確立のため、どんな戦略を立てているのか。元自衛隊空将が読み解く。

要約

戦争の未来

 ある日突然、車のカーナビゲーションが動かなくなる。ATMからお金が引き出せない。携帯電話も通じなくなる。そんなことが起こったら、もしかすると宇宙戦争の始まりかもしれない ―― 。

宇宙への依存を深める我々の生活

 実際に、もしGPS(測位衛星システム)の機能が停止すれば、カーナビをはじめ位置情報を利用する交通、航空、船舶システムが使えなくなる。

 GPSは距離測定の他に、高精度な時刻同期の機能を持ち、多くの機器がこれを共有して正常な機能を果たしている。GPS信号が途絶えた数時間後には、通信ネットワークは正常に作動しなくなる。

 米国ではGPSが運用を停止すると、米国産業界の被害総額は1日あたり10億ドルと見積もられている。それだけの被害が予想されるのは、宇宙アセット(資産)が攻撃からの防御を前提とせず、固有の脆弱性を有しているためだ。

宇宙空間は競合し、混雑し、敵対する領域へ

 そもそも、宇宙空間は国際公共財の1つに位置づけられ、本来であれば、誰もが自由に活用できる人類共有の領域である。

 しかし近年、経済成長の推進基盤としての利用が進み、宇宙空間は競合し(Competitive)、混雑し(Congested)、敵対する(Contested)という3つの「C」を有する領域へと変わりつつある。

 その中で、宇宙空間における自国の排他的権利を主張し、実際にその権利を守るための軍事行動を起こす国の存在が懸念される。それは、警戒監視や情報通信の分野で宇宙アセットの軍事的重要性が高まることと相まって、宇宙空間を作戦/戦闘領域として考える傾向を助長させている。

ハイブリッド攻撃を仕掛けたロシア

 第二次大戦後、核兵器の登場もあり、大国間の軍事力による戦争を避けようとする傾向は続いた。

 ロシアは2022年2月の軍事侵攻前後、ハイブリッド攻撃をウクライナに仕掛けた。同国の政府、金融、防衛、航空部門に対して、大規模なDDoS(分散型サービス拒否)攻撃、マルウェア送付、Webサイト改竄などを行う一方、2月24日の侵攻当日には、民間衛星通信会社のブロードバンド衛星に対してサイバー攻撃を仕掛けたのだ。

戦場を変える先進技術

 今回の戦争では、民間の商用衛星画像や民間衛星通信インターネットサービス、電波源から判別される電子信号情報やSAR(レーダー)情報が、ウクライナ国内における軍事的な事象や活動を宇宙から可視化することに貢献した。それは、リモートセンシング衛星の情報が、戦争の推移に大きな影響を及ぼすようになったことを意味する。

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