2024年4月号掲載

影響力の武器 [新版] ――人を動かす七つの原理

Original Title :INFLUENCE, NEW AND EXPANDED. (2021年刊)

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著者紹介

概要

「欲しくもないモノを買わされてしまった」「怪しい儲け話に乗せられてしまった」…。なぜ、こうなるのか? 人の心をくすぐり、誘導する原理、テクニックを明かす。本書は、心の動きに影響を及ぼす6つの原理を説いた名著の新版で、新たに1つの原理を追加したもの。人を動かすための7つの誘導戦略を、様々な事例を挙げ紹介する。

要約

「影響力の武器」とは?

 セールスマンや募金活動員、広告マン…。こうした“説得上手な人たち”は、相手に“イエス”と言わせるために多くの戦術を使う。

 そのテクニックは7つに分類でき、いずれも心理学の原理を活用したものだ。本書ではそれを、「影響力の武器」と呼ぶ。

①返報性

 こんな実験がある。ある大学教授が、まったく知らない人たちにクリスマスカードを送った。すると、返事が山のように来た。カードを受け取ったほとんどの人は、その大学教授が何者なのか尋ねもせず、自動的に返事を出したのだ。

 この実験から浮かび上がってくる「影響力の武器」は、「返報性のルール」である。これは、「他人がこちらに何かしてくれたら、こちらもそのお返しをしなくてはならない」というルールである。このルールによって、我々は贈り物などを受けると、お返しをする義務を感じるのだ。

 しかし、このルールを守ろうとする過程で、私たちは一儲けを企む相手に騙されることがある。

 例えば、マーケティングのテクニックとして、無料試供品の配布がある。無料試供品の強みは、それが一種の贈り物でもあるため、返報性のルールを持ち込める点にある。

 家庭用品などの生産、訪問販売を行うアムウェイ社は、洗剤やシャンプーなどが入った専用ボックスを、短期間、顧客の家に置いていく。そして、試用期間が終わると販売員がやってきて、客が買いたいと思う製品の注文を取る。

 専用ボックスを置くことを承諾してそれを試用した人は、返報性のルールの罠に引っかかっている。そうした人の多くは、「試しに少し使ったのだから注文しないと悪い」と思ってしまうのだ。

 例えば、路上で少年が私に、サーカスのチケットを1枚5ドルで何枚か買ってほしいと言う。断ると、ならば1本1ドルでチョコバーを買ってくれと言う。そこでチョコバーを買ってしまう ―― 。

 この状況の背景にあるのは、「譲歩してくれた相手に対しては、こちらも譲歩を返す義務が生じる」と感じてしまうことだ。チケットにもチョコバーにも興味がないのに、少年が大きな要求から小さな要求へと譲歩したので、こちらも譲歩して二番目の要求を受け入れてしまうというわけだ。

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