2024年9月号掲載
FRIENDSHIP フレンドシップ 友情のためにすることは体にも心にもいい
Original Title :PLATONIC:How the Science of Attachment Can Help You Make-and Keep-Friends (2022年刊)
- 著者
- 出版社
- 発行日2024年7月22日
- 定価2,420円
- ページ数559ページ
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著者紹介
概要
友情は心身の健康に多大な影響を与える! そう語る心理学者が、最新の研究成果をもとに、人生を豊かにする友情の力を解き明かす。友達を持つことは「最強のうつ予防策」「死亡リスクが45%低減する」「恋人と過ごすより大きな幸せにつながる」…。大人になってから友達をつくる方法など、良き人間関係を築くヒントを提供する。
要約
友情で人生が変わる理由
私たちは「友情」が持つパワーに早く気づくべきである。友情の持つ影響力は軽視されているものの、実は非常に深遠だ。
古代ギリシア人は、友情を人類繁栄へのカギだとして、哲学的に考察していた。例えば、アリストテレスは『ニコマコス倫理学』の中で、友情がなければ「誰も生きようとはしない」と主張する。
最強のうつ予防策は友情
友情が持つパワーは、科学によって証明されてもいる。科学者は、うつに影響する106の要素のうち、信頼できる友達を持つことが、最強のうつ予防策となることを発見した。
友情が持つ癒しの力は、体の健康にまで及ぶ。ある研究によると、エクササイズは死亡リスクを23~30%、食生活は最大24%下げるが、大きな交流ネットワークを持っていると死亡リスクが45%も低減することがわかっている。
家族とは種類の違う関係が持てる
人とのつながりから得られる恩恵の多くは、もちろん家族や配偶者など、友達以外の親しい関係を通じて得られるものだ。しかし、友情には友情ならではの利点がある。
友達は親と違い、私たちに自分の期待や欲求を叶えてほしいとは思っていない。配偶者と違い、その人のすべてになったり、欠けた部分を補う存在になったりという、大きな期待を背負わされることもない。退職後の生活を計画する必要もなければ、風呂掃除を誰がするかを決める必要もなく、気兼ねなく、喜びを味わうための場にできる。
ある研究では、友達と一緒に過ごす方が、配偶者や子どもと一緒に過ごすよりも大きな幸せにつながることがわかった。理由は、友達と一緒だと、ボウリングをしたり、イベントに出かけたりと楽しく過ごせる一方で、配偶者や子どもと一緒にする行動は、食器を洗ったり、歯磨きをするよう促したりなど、日常的なものになるためだ。
私たちは、応援してくれ、理解してくれ、一緒に喜んでくれる人たちを、友達として自分で選べる。友情というものを通じて、私たちは人生で最も肯定的で、安全で、神聖な人間関係を自分で選ぶことができるのだ。
誰かと親しくなる時にはその人物を取り込んでいる
心理学の分野に「自己拡張理論」というものがある。これは、人が精神的に満たされるには、アイデンティティを常に拡張する必要があるという理論だ。そして、その拡張する手段の基本は人間関係である。
人は誰かと親しくなると、自己意識の中にその人物を取り込む。この現象を「自己への他者の包含」と呼ぶ。例えば、友達がキリマンジャロに登ると、まるで自分が登ったかのように感じ、そのため自分が登る心の準備もできたと感じる。
私たちが友達に共感を抱くのは、ある意味「自己への他者の包含」のせいでもある。まるで、自分自身に共感を抱いているように感じるのだ。