2024年10月号掲載
教養としての世界の政党
著者紹介
概要
私たちは国際政治について語る時、1つの国を一枚岩で捉えがちだ。「米国はこう」「イスラエルはユダヤの国だ」…。だが、それは単純化しすぎ。各国には、保守やリベラルなど、主張を異にする多様な「政党」が存在する。そうした実情を元外交官がわかりやすく解説。世界の現状と未来を読み解く上で、政党の知識は欠かせない!
要約
政党とは何か?
世界各国の「政党」を知り、政策を見ていくと、その国がこれからどこへ進もうとしているのか、何を大切にしているのかが見えてくる ―― 。
保守かリベラルか
政党というものを大まかに理解する上で、「保守かリベラルか」という分類は役立つ。
一般に、保守は伝統を重んじ、安全保障や国家防衛に力を入れる。社会的平等よりも経済的な自由を求め、「市場経済」を尊重する傾向がある。
一方、リベラルは伝統よりも社会的な平等を重んじる。「ある程度は政府が介入して、皆が幸せになれるようにしよう」という考え方だ。
しかし、これらは一般論。政党に属する議員がどんな地域の代表で、宗教や業界との関わりの深さはどうか、といったことに大きな影響を受ける。
大きな政府か、小さな政府か
各政党は、「2つの軸」から読み解ける。
1つ目は、その政党が目指す政府が小さいか大きいか。「小さな政府」とは「個人の自由を尊重するから、公共サービスや福祉は最小限でいい」という考え方。小さな政府と保守には、共通点が多くある。小さな政府の代表は米国で、共和党も民主党も、原則として経済的な自由を重視する。
かたや「大きな政府」は、教育、福祉、医療、環境保護など、補助金や規制を通じて国民の生活に政府が介入する。大きな政府はリベラルと共通点が多くある。大きな政府の代表例が、福祉国家で知られる北欧の国々である。
国際協調的か、自国中心的か
2つ目は「国際協調的か、自国中心的か」。この軸は、自由貿易や移民に関して、その政党が目指す政府は、世界でどんなスタンスをとり、他国とどう関係していくかを知る指針となる。
移民や難民を受け入れるには、様々な違いを認めなければならない。それができるかどうかが、国際協調的か否かを決める分かれ目となる。社会的平等を目指すリベラルは国際協調的に、伝統を重視する保守は自国中心に傾くことが多い。