2024年11月号掲載

THE COMING WAVE AIを封じ込めよ DeepMind創業者の警告

Original Title :The Coming Wave (2023年刊)

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著者紹介

概要

“人工知能(AI)”と“バイオテクノロジー”。今や私たちの生活に欠かせない2つの技術について、本書はこう警告する。これらを「封じ込め」なければ、世界は大惨事に見舞われる、と ―― 。進化のスピードを上げ続け、人間の制御が及ばない領域に踏み込みつつある最先端テクノロジー。その脅威を詳細に示した1冊である。

要約

来たるべき波

 歴史をひもとけば、帝国や宗教の盛衰、商業の隆盛などにおいて、一連の「波」が起きていることがわかる。キリスト教もイスラム教も、始まりは小さな波紋だった。それが地球上に大きく広がる巨大な波になった。波は物事を変化させるきっかけとして、歴史に何度も現れてきた。

「来たるべきテクノロジーの波」の2つの中核

 テクノロジーの進歩と普及も、世界を変える波となった。そして今、私たちの周りで新しいテクノロジーの波がぶつかり合っている。

 「来たるべきテクノロジーの波」には、2つの中核テクノロジーが存在する。人工知能(AI)と合成生物学(バイオテクノロジー)だ。

 AIはすでに本格導入されている。難病の治療薬発見、水道管の漏水検知、核融合反応の制御、輸送経路の最適化…。様々な分野で活用されているが、本領が発揮されるのはこれからだ。

 AIは、他のテクノロジーより深遠で強力だ。AIは単なるツールではない。様々なものの「背後」に存在し、変革を起こす「メタ・テクノロジー」なのだ。それは自らツールやプラットフォームを作り上げ、あらゆるシステムを構築する。

生命のテクノロジー

 一方、合成生物学も重要な変革をもたらしている。ここ数十年で、私たちはDNAの情報伝達システムを理解し、このシステムに介入し、進化の方向を変えられるようになった。その結果、食品や医薬品、材料、製造プロセスなどが大きく変わりつつある。

 また、「電池になるウイルス」「汚水を浄化するタンパク質」「人工的に培養された臓器」など、数えきれないほどの実験が進行中だ。

 そして、医学の進歩にも期待が集まっている。2021年には、藻類から取り出した遺伝子を用いた遺伝子治療によって、完全に失明していた患者の視力をわずかだが回復させることに成功した。白血病など、かつて難治性だった様々な疾患の治療法も開発されつつある。

 これが実現すれば社会的影響は大きい。寿命と同時に、認知力、外見、体力、身体能力といったものも向上させるだろう。これらを求める人もいる一方で、混乱と批判もあるだろう。

 いずれにしろ、重大な肉体的変異が起こりつつある。記憶力向上や筋肉強化が可能となり、まもなく「遺伝子ドーピング」がスポーツ、教育、職業生活の現実の問題になるだろう。

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