2024年11月号掲載

生きることは頼ること 「自己責任」から「弱い責任」へ

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著者紹介

概要

自分のことは自分で何とかすべき、他人を頼るなど“無責任”だ ―― 。新自由主義の広がりにつれ、声高に叫ばれるようになった「自己責任論」。これに気鋭の哲学者が異を唱えた。助けを求めることこそ、むしろ責任ある行動だ、と。誰かに押し付け、人々を分断するのではない、「利他」を促す、新たな「責任」のあり方を示す。

要約

「責任」と「頼ること」

 次のような場面を想像してほしい。

 あなたは1人で幼い子どもを育てている。仕事と家事と育児をすべて1人で担っている。

 ある日、あなたは体調に異変を感じる。しかし、簡単に休むわけにはいかない。家には、あなたの世話を待っている子どもがいて、家の外には、あなたの仕事を待っている同僚がいる。

 この時、あなたには2つの選択肢がある。

 1つは、無理をして今の生活を続けることだ。それによってあなたは、当面は、誰にも迷惑をかけないで済む。しかし、いつか取り返しのつかない病気になり、かえって職場に大きな迷惑をかけ、子どもの命を危機にさらすかもしれない。

 もう1つの選択肢は、他者を頼ることである。仕事・家事・育児を思い切って誰かに代わってもらう。それによって、結果的には、周囲への迷惑を最小限に抑えることができるだろう。

 責任を引き受けることは、他者を頼ることと矛盾しない。むしろ、仕事を抱え込み過ぎてパンクすることこそ、無責任である。

 しかし、私たちの社会には、それを認めない言説も存在する。それが、「自己責任論」だ。自己責任論者は、こう主張するに違いない。

 こうした主張を論駁し、それに代わって、他者を頼ることをそのうちに含むような、もう1つの責任概念を理論化する ―― 。

 

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