2024年12月号掲載
従属の代償 日米軍事一体化の真実
- 著者
- 出版社
- 発行日2024年9月20日
- 定価1,078円
- ページ数254ページ
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著者紹介
概要
日本も含め、東アジアは激しいミサイル軍拡競争の時代に突入する! 安全保障専門のジャーナリストが、戦争の危機が高まっていると指摘。日本が進める自衛隊の軍備強化や米軍との一体化、台湾有事を想定した米中の軍備増強の実態などを語った。今の状況が続けば、核戦争という“最悪のシナリオ”もあり得ると警鐘を鳴らす。
要約
南西の壁
台湾海峡の緊張激化、中国とロシアの関係強化など、日本を取り巻く安全保障環境は、第二次世界大戦後、最も厳しいものになっている。
そんな中、日本政府は米国と行動を共にすることで、この状況を乗り切ろうとしている。防衛の現場を取材していると、自衛隊の軍備強化と米軍との一体化が猛スピードで進んでいるのがわかる。
「南西の壁」が完成
防衛省は2024年3月、沖縄本島に地対艦ミサイル部隊を配備した。南西諸島への配備は、奄美大島、宮古島、石垣島に続いて4つ目だ。
背景には、中国の海洋進出と尖閣諸島周辺での活動の活発化があった。中国は2006年から、尖閣諸島周辺を含む東シナ海でパトロールを開始。2008年には、海洋調査船2隻が初めて尖閣諸島周辺の日本領海に侵入する事案が発生する。
こうした動きを受けて、陸上自衛隊の中で南西諸島防衛の必要性が強く認識されるようになった。
南西諸島の島々に地対艦ミサイル部隊を配備すれば、中国の侵攻部隊を乗せた艦艇の接近を阻むことができる。ミサイルの壁で中国の侵攻をブロックすることから、「南西の壁」と名付けられた。
米軍が危機感を強めた中国の接近阻止能力
「南西の壁」構想が生まれた2010年頃、米国でも中国に対する警戒感が強まっていた。米国が最も警戒していたのは、中国の「接近阻止・領域拒否」(A2/AD)と呼ばれる能力の強化である。
A2/AD能力とは、有事の際に米軍の戦域へのアクセス(接近)や行動の自由を阻害し、米国の軍事介入を拒否する能力を意味する。
中国海軍がA2/AD能力を強化すれば、米軍の行動は制約され、台湾有事における軍事介入も困難になる。こうした状況に強い危機感を抱いた米軍は、中国に対抗する構想の検討に着手する。
そんな中、2012年に米海軍大学の教授らが、南西諸島全体に地対艦ミサイル部隊を配置すれば、中国軍の台湾への攻撃、米軍の台湾接近を妨害する行為などを阻止できるとする論文を発表。「南西の壁」は台湾有事でも使えると主張した。
米国の安全保障専門家らの提言は、やがて米軍の戦略に正式に採り入れられる。その結果、南西諸島の防衛が目的だった「南西の壁」が、台湾有事で米軍が優位に戦うための「盾」に変質した。