2025年1月号掲載
武士道 ぶれない生きざま
- 著者
- 出版社
- 発行日2017年3月30日
- 定価1,760円
- ページ数269ページ
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著者紹介
概要
1900年に米国で刊行され、世界的ベストセラーとなった『武士道』の現代語訳である。武士道の源泉から、武士道における徳目、切腹の制度まで。新渡戸稲造が海外の人に向けて説いた内容を、わかりやすい言葉で紹介する。武士道は「桜に並ぶ、日本に根ざした花」、と述べられる通り、その精神は今も私たちの心を引きつける。
要約
道徳体系としての武士道
武士道は、日本の象徴である桜花に並ぶ、日本の国土に根ざした花である。それは姿や形があるわけではない。しかし道徳的な雰囲気の香りを漂わせ、いまなお私たちを引きつける存在である。
武士階級のノブレス・オブリージェ
武士道は、「騎士道(Horsemanship)」というよりも、もっと深い意味がある。すなわち、武・士・道とは、武人あるいは騎士の道であり、武士がその職分を尽くす時でも、日常生活においても、守らなければならない道である。
言い換えれば、武士の掟であり、武士階級の「ノブレス・オブリージェ ―― 高い身分に伴う義務」なのである。
語られも書かれもしない掟
武士道は武士の道徳的な掟であって、武士はこれを守り、行うことを要求されるものである。
それは文字に書かれた掟ではない。せいぜい口伝えに、あるいは有名な武士や学者の筆によって伝えられた、わずかな格言があるに過ぎない。
それは1人のすぐれた頭脳によって創造されたものでもない。数十年、数百年におよぶ武士の生き方から、徐々に成長を遂げてきたものである。そのため、特定の時期と場所を指して、「ここが武士道の源である」ということはできない。
ただし、武士道は封建時代に自覚されていったものだから、その起源は封建制の発生と同一と見てよい。わが国の封建制度の発生は、12世紀の末、源頼朝の制覇と同じ時期だといえるだろう。
職業的な武士階級「サムライ」
欧州と同じように日本においても封建制度が確立されると、職業的な武士階級が勢力をあらわしてきた。彼らは「サムライ」として知られた。
「武家」または「武士」という言葉も一般に使われてきた。彼らは特権階級であって、もともとは戦闘を職業とする粗野な素性の者たちであったに違いない。この階級は、長年にわたり戦闘が繰り返されているうちに、最も勇猛果敢な者の中から自然に選び出されたのである。
その過程で、弱い者や臆病な者は自然と排除されていった。エマーソン(アメリカの思想家、詩人)の言葉を借りて言えば、「男らしく、野獣のごとき力を持つ粗野な者たち」だけが生き残り、ついには「サムライ」という家系とその階級を作り上げていったのである。
彼らは大きな名誉と特権を持つようになると、その責任を自覚し、彼らの行動を律する共通の規範が必要であると感じるようになった。特に彼らは常に戦闘を支える立場にあり、またそれぞれの異なる士族に属していたからなおさらである。