2025年3月号掲載

冤罪 なぜ人は間違えるのか

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著者紹介

概要

罪が無いのに疑われ、罰せられ、人生が台無しに。そんな「冤罪」が生じる原因を、元裁判官で、冤罪事件に取り組む弁護士が明らかにした。初動捜査の見立ての誤り、高圧的な取り調べが生む虚偽自白…。こうした誤りの積み重なりが冤罪を生むが、司法はきちんと原因検証を行わない。だから、冤罪が繰り返されるという。

要約

プレサンス元社長冤罪事件

 プレサンス元社長冤罪事件。私が弁護し、冤罪研究を始めるきっかけになった事件である。

 この事件は大阪を本社とした不動産会社、プレサンスコーポレーションの創業社長である山岸忍さんが、大阪地検特捜部により、ある学校法人の新理事長が起こした業務上横領罪の共犯として逮捕・起訴されたというものだ。

 しかし、山岸さんは新理事長と会ったこともなく、無実を示す客観的証拠が複数存在していた。それなのになぜ逮捕されたかというと、大阪地検特捜部は、この学校法人の校地購入に関わった山岸さんの部下と取引先社長を取調べで威迫し、「山岸さんが主犯」という見立てに沿う供述を押し付けていたのである。

「検察なめんなよ」

 2019年12月8日、検察官は山岸さんの部下に対する取調べにおいて、机を叩き、大声で怒鳴りながら、約50分にわたって責め立てた。

 「反省しろよ、少しは」「何でこんな見え透いた嘘をつくんだ」「検察なめんなよ」…。

 この時点では、部下は山岸さんの関与を否定していた。ところが同日、並行して取調べを受けていた取引先社長の方が先に折れてしまった。

 「山岸さんが主犯だと白状しないと罪が重くなる」。このように脅された取引先社長は「助けて下さい」と述べて、山岸さんの関与を肯定する供述を始め、山岸さんを事件に引っ張り込んだ。

 翌日、検察官は再び部下に対し、取引先社長が山岸さんの関与を認めるに至ったことを告げた。その上で刑事責任と民事責任を仄めかされたため、部下も山岸さんの関与を認めてしまった。

史上最多の保釈条件

 そんな山岸さんを救出するため、私たち弁護団は、日本史上最多の15個の保釈条件を提案した。裁判所は提案を受け入れ、最終的に7億円もの保釈保証金を積むことで保釈が認められた。結局、山岸さんの身体拘束は合計248日間に及んだ。

 

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