2025年5月号掲載

ゆたかさをどう測るか ――ウェルビーイングの経済学

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著者紹介

概要

幸せでゆたかな一生を送りたい ―― 。誰もがそう願い、経済成長によって「ゆたかな富」がもたらされた。しかし、物的なゆたかさは、幸福にはつながっていない。人のつながりは希薄になり、社会は息苦しくなっている。「ウェルビーイング」(ゆたかな生)の実現には何が必要なのか? 経済学の知見を基に考える。

要約

GDPとは何であったか

 「ウェルビーイング」(ゆたかな生)が花盛りである。この語は2020年代になって、新聞や書籍などで急速に使用されるようになった。

そもそもウェルビーイングとは

 ウェルビーイングが認知されるきっかけとなったのは、1948年に発効した世界保健機関(WHO)憲章における「健康の定義」である。そこでは「健康」がこう定義されていた。

 「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態」

 この「満たされた状態」がウェルビーイングだ。逆から読めば、ウェルビーイングとは肉体的・精神的・社会的に健康・健全なことだともいえる。

GDPの落とし穴

 ウェルビーイングは花盛りといったが、それ以上に花盛りなのが「GDP(国内総生産)」である。

 戦後から今日に至るまで、経済活動の実績はGDPによって評価されてきた。また、GDPは付加価値の総計を意味し、これを人口で割った「1人当たりGDP」(平均所得)は、「国民のゆたかさ」の指標として利用されている。

 だが、GDPには落とし穴がある。

 第1に、GDPは市場化・商品化された限りでの経済活動の集計値であって、商品とならない経済活動はこれに算入されない。第2に、どうやって付加価値を集計するかという大問題を抱えている。

 つまり経済の商品化が進んだ社会ほどGDPは大きくなる。いわゆる伝統的共同体が残存している地域や国のGDPは、実際の経済活動よりも過小な数字となって出てくることになる。

 第2の集計問題も厄介だ。経済活動の中には、その集計から漏れてしまう営みがある。例えば、露天商などは「地下(アングラ)経済」と呼ばれるように、実態把握が難しく、公式統計には反映されがたい。

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