2022.10.17

編集部:西田

待ったなしの「リスキリング」 学び直せる人は何が違う?

待ったなしの「リスキリング」 学び直せる人は何が違う?

誰かに「いまどれくらい健康ですか」と尋ねたとき、「20年前にマラソンを完走したことがあります」と言われれば、ピントのぼけた返事だと思うだろう。ところが、教育について尋ねて、「20年前に大学で経済学を専攻しました」という返事が戻ってきても、たいていの人は納得してしまう。

(『LIFE SHIFT2』 265ページ)

 

 2022年10月3日に召集された臨時国会。岸田文雄首相は、所信表明演説で「構造的な賃上げ」を重点分野の1つに挙げました。(「第二百十回国会における岸田内閣総理大臣所信表明演説」首相官邸HP)
 これを実現するための1つの具体策として「人への投資」を推進し、個人の「リスキリング」(成長分野に移動するための学び直し)を支援することを表明。今後5年で1兆円を投じるとしています。
 冒頭に掲げたのは、企業向けに生涯学習プラットフォームを提供しているディグリード社のデーヴィッド・ブレイクとケリー・パーマーの言葉として『LIFE SHIFT2 人生100年時代の行動戦略』で紹介されている一節です。健康の重要性は人生のどの段階でも認識されているのに対し、成人教育はそうではないことがよくわかります。
 岸田首相の所信表明演説は、そうした状況が変わろうとしていることを告げるものです。冒頭の発言にあるような、何年も前に受けた教育が認められる時代は終わりを迎え、常に自らの学びを点検し、必要に応じて学習し直すことが、すべての人に求められる――。そんな社会が、本格的に到来しつつあります。

 しかし、リスキリングにいざ取り組もうとすると、様々な課題に直面するもの。例えば、エン・ジャパン株式会社が2022年9月に公表した調査結果では、「リスキリングに取り組む上での課題、難しいこと」についての質問に、「学習時間の確保」や「モチベーションの維持」といった回答が寄せられています(「ミドル1700人に聞く「リスキリング」実態調査」/エン・ジャパン株式会社2022年9月8日)。
 では、これらの課題を乗り越えてリスキリングで成果を上げるためには、何を意識すればいいのか? 今週は、それを考える上で役立つマインドセットを教えてくれる本をご紹介します。
 Pick Upするのは、冒頭にも引用した『LIFE SHIFT2 100年時代の行動戦略』(アンドリュー・スコット、リンダ・グラットン著/東洋経済新報社)。長寿社会での人生のビジョンを提示して大反響を呼んだベストセラー『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著/東洋経済新報社)の続編で、小誌「TOPPOINT大賞 2022年上半期」(ビジネスリーダー1万人が選ぶベストビジネス書のランキング)でも第3位を獲得した1冊です。

 本書は、現在進んでいる社会の変化について、次のように述べています。

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