2003年10月号掲載
鬼のこれだけはするな 結果を出す人出せない人
著者紹介
概要
江戸時代、100に及ぶ“戒語”を記した良寛和尚は、「相手の顔を見るな」「大きい声を出すな」と戒めた。一方、現代ではこれと正反対のことがタブーとされる。このようにタブーは時代によって大きく変わるが、ビジネスの世界ではいまだに30年前のタブーに振り回されている人々がいる。そんな現状を憂う著者が、今の時代にふさわしい“戒語”を提示する。
要約
「サラリーマンタブー」
サラリーマンには「してはいけないこと」「しない方がいいこと」がある。それをすると、損をしたり、信用を失ったりする。これを「サラリーマンタブー」という。
タブーは法律や規則ではない。その時代、その環境に生きた人が、成功や失敗の経験から得た“知恵”である。それゆえ、タブーは時代背景と社会環境によって大きく変化する。
サラリーマンタブーも同様で、この時代、この環境に生きるサラリーマンにとってのタブーがある。それは例えば、次のようなものである。
「会社は悪」という言葉に惑わされるな
昭和44年、三鬼陽之助氏の著書『サラリーマンタブー集』がベストセラーになった。
当時、日本は高度成長期にあり、“猛烈社員”といわれる商社マンがアフリカの奥地にまで物を売りに行っていた。
日本の急成長に恐れをなした欧米は、「エコノミックアニマル」と言って非難したが、やがて日本国内でも、そんな声を受ける形で「猛烈主義は良くない、マイホーム主義でいこう」という声が上がり始めた。
こうした時代背景のもと、出版されたのが同書である。そのため、取り上げられたタブーには、「会社と心中するな」「組織の奴隷になるな」など、個人中心、個性尊重を主張するものが多い。
だが、時代は大きく変わった。今や日本は危機的状況にあり、いつ会社が潰れてもおかしくない。
それなのに、今も当時のタブーを、「会社は悪」「会社と個人は対等」といった言葉に置き換えて、信奉する者がいる。会社を「社員から搾取する非人間的組織」と捉えて、会社と距離を置き、力の出し惜しみをする社員がいる。
「死ぬか生きるかの時代」である今、こんな姿勢の社員は、まず真っ先に死ぬ。生き残るには、こうした「反会社の思想」に惑わされないことだ。
いい条件、うまい話ばかり探すな
就職に際し、学生は「条件のいい会社」を探す。その条件とは「会社が自分のために何をしてくれるか」であって、「自分が会社で何をするか」ではない。