2004年1月号掲載
これから働き方はどう変わるのか すべての人々が「社会起業家」となる時代
著者紹介
概要
新しい時代の働き方について数々の提言を行ってきた著者が、「何のために働くのか」「何を求めて働くのか」という根源的な問いの答えとして、「社会起業家」という新しいコンセプトを示す。それは決して特殊な働き方ではなく、わずかな視点の転換で実現できることである。シンプルな語り口で読みやすいが、その中に込められたメッセージは、強く心に響いてくる。
要約
なぜ我々は「働く喜び」を失ったのか
今、職場を見渡すと誰もが忙しそうに働いている。しかしその顔からは、なぜか喜びが伝わってこない。そんな職場が増えている。
なぜ我々は、「働く喜び」を失ったのか?
その理由は、「生き残り」「勝ち残り」「サバイバル」といった“寂しい言葉”にある。
構造改革という荒波が押し寄せる中、「競争原理」や「市場競争」が金科玉条のごとく語られ、“寂しい言葉”が洪水のように耳に入ってくる。
そんな状況下で、人々は「なぜあなたは一生懸命に働くのか」という問いにも、条件反射的に「生き残るため」と答えてしまう。
しかし、我々が一生懸命に働くのは「生き残る」ためなのか。それは本来、「働く喜び」とでも呼ぶべき、素晴らしい何かを求めてのことではなかったのか。
今こそ、「我々はなぜ働くのか」という自らの「仕事の思想」を深く見つめ、時代の波に流されることなく、その原点へと帰らなければならない。それは、「生き残り」の思想から、「働く喜び」の思想への回帰である。
そのためには、「仕事の報酬とは何か」を深く問うことだ。
「仕事の報酬」と聞くと、多くの人はすぐに2つの報酬 ——「給料や収入」と「役職や地位」を思い浮かべるだろう。我々は往々にして、こうした「目に見える報酬」だけに気をとられがちだ。しかし本当に重要なのは、「目に見えない報酬」、すなわち次の3つの報酬である。
第1の報酬は、「職業人としての能力」だ。
イチロー選手にこんなエピソードがある。