2004年7月号掲載
実践する経営者 成果をあげる知恵と行動
Original Title :ADVICE FOR ENTREPRENEURS
著者紹介
概要
「経営の神様」であり「現代社会最高の哲人」であるドラッカーの、30年にわたって経済紙に書いた連載記事のうち、経営者に対する助言をまとめたもの。内容の多くは過去の著作から一貫する経営の原理原則だが、あらためて手帳に書き留めたくなる言葉も多い。
要約
経営者が心すべきこととは?
本書は、成長と戦略、パートナーシップ、イノベーションと生産性、経営の評価など、7テーマ28項目の経営に関するドラッカーの助言を収録したものである。いくつかを紹介すると ── 。
不確実性時代のプランニング
経済、社会、政治の不確実性が増大し、確率に基づく「予測」という従来型のプランニングが意味を持たなくなりつつある。
従来型のプランニングは、最も起こりそうなことは何かを考えた。しかし、不確実性時代のプランニングでは、すでに起こったことで未来を創り出すものは何かを考えなければならない。
そのために、第1に目を向けるべきものが人口構造である。
先進国の労働力に2つの大きな変化が生じた。高等教育の普及と、キャリアを求める女性の急増である。いずれも既成の事実である。また、人口と労働力の高齢化も既成の事実である。
従って、経営者はこの既成の事実が自社の事業にとっていかなる意味を持つのか、いかなる機会や脅威をもたらすのか、を問わなければならない。
第2に、産業、市場、価値観、科学技術において、すでに起こっており、まだ大きな影響をもたらしていない変化は何かを考えなければならない。
そして第3に、経済や社会のトレンドは何か、それらは事業にいかなる影響を及ぼすかを考えなければならない。
最も重要なトレンドは、可処分所得の配分である。第2次大戦後、消費者の可処分所得のうち、テレビやビデオなどの電子機器に消費される割合が増大した。このトレンドこそ、日本企業が見抜き、利用したものだ。
すでに起こった変化は何かとの問いに対する答えが、会社にとっての可能性を明らかにする。この可能性を現実へと転化するには、自らの強みを機会に合わせることが必要となる。
わが社の強みは何か、うまくやれるものは何か、何にそれを使うかを問わなければならない。