2004年9月号掲載
ザ・トヨタウェイ
Original Title :THE TOYOTA WAY
- 著者
- 出版社
- 発行日2004年7月26日
- 定価2,420円
- ページ数(上)289ページ、(下)293ページ
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著者紹介
概要
巷にあふれる“トヨタ本”。その中で本書が一線を画すのは、20年同社を研究し、トヨタウェイのファンを自認する米国人著者が、主に米国のトヨタ工場を通して、トヨタというグローバル企業を描き出している点だ。カンバン、カイゼンといった独自の生産システムと両輪の関係にある企業文化や哲学に迫っており、興味深い。
要約
トヨタウェイとは?
現在、トヨタは170カ国で年間600万台の車を販売し、GM、フォードに次いで世界第3位の自動車メーカーである。業界アナリストは、2005年にトヨタはフォードを抜いて世界第2位になり、そのうち世界のトップになると予想している。
トヨタが成功した主な要因は、その驚異的に高い品質が評価されたことにある。2003年に同社がリコールした車の台数はフォードより73%、クライスラーより93%少なかった。車を購入する人が参考にする雑誌『コンシューマーリポート』によれば、過去7年で最も故障の少ない38車種のうち、15車種がトヨタ車だった。GM、ベンツ、BMWは、このリストに1つも入っていない。
同社の業績が信じられないほど安定しているのは、製造力が卓越しているからだ。この製造力の一部は、トヨタ生産システム(TPS)と呼ばれる、ジャストインタイム、カイゼン、1個流し生産、自働化、ヘイジュンカ(平準化)といったツールや品質改善手法の賜物である。
だが、ツールや手法は秘密兵器にはならない。トヨタがこうしたツールをうまく使いこなし続けているのは、人と人の動機づけに対する深い洞察に基づく事業哲学の存在が大きい。
トヨタが成功する要因は、リーダーやチームの育成、企業カルチャーの醸成、戦略の立案、部品メーカーとの関係構築、学習する組織の維持といった多様な能力にある。それらを生み出す経営原則や哲学が、「トヨタウェイ」である。
トヨタウェイの「14の原則」
著者の20年間にわたるトヨタ研究によって、トヨタウェイは、4つのカテゴリーに分類される、14原則からなることが明らかになった。
①長期的考え方
原則1 短期的財務目標を犠牲にしても、長期的な考え方で経営判断する
企業は、時に短期的な利益を犠牲にしてでも、正しいことを行って好業績を上げられるだろうか? トヨタの経済界への最大の貢献は、これが可能だという実例を提供していることである。
同社の社員は、単に給料を稼ぐ以上の目的意識を持っている。「トヨタとその従業員と顧客と社会全体に対して正しいことを行う」—— その使命感と、顧客、従業員、社会全体に対するコミットメントは、「トヨタウェイの全ての原則の土台」であり、トヨタを真似ようとしているほとんどの企業に欠けている要素である。
1980年代初め、トヨタはGMと合弁会社を作った。そして、TPSに批判的だったGMの従業員に、その良さを理解してもらうことに努めた。
なぜ、競争相手に秘伝の生産システムを教えたのか? トヨタが合弁を行った動機の1つは、当時GMが製造面で苦しんでいたことだった。合併によるGMの製造能力向上で、トヨタは社会に貢献し、米国内の高賃金雇用を増やすことができた。