2022年2月号掲載
成しとげる力
著者紹介
概要
日本電産を創業、世界一の総合モーターメーカーに育て上げた永守重信氏が、23年振りに書き下ろした書。「一番をめざせ」「苦労に飛び込め」「人の心の機微をつかめ」等々、半世紀におよぶ経営者人生から導き出した哲学が語られる。そのメッセージは一見シンプルだが、比類なき実績に裏付けられ、説得力に溢れている。
要約
一番をめざせ! 力はあとからついてくる
私は子どもの頃から、「一番になること」しか考えていなかった。野球をする時も、ピッチャー兼四番バッターでなければ気がすまなかった。
1973年7月に日本電産を創業した時、私はたった3人の従業員を前に、1時間40分にもわたって訓示を垂れた。「めざしているのは零細企業や中小・中堅企業ではなく、兆円企業である」こと、「精密小型モータの分野で世界のトップになる」ことを明言した。
そして、明言した通りに夢をかなえてきた ―― 。
母から学んだ勝つことへの気概と執念
一番をめざすという強い心を私に植えつけてくれたのは、母であった。子どもの時、友達との喧嘩に負けて泣きながら家に帰ると、母親は「なんで負けたんだ」と叱る。挙げ句の果てに「もう1回、喧嘩してきなさい」と尻を叩かれた。
母親はなぜ勝ちにこだわったのか。いまになって振り返ると腑に落ちる。子どもはやがて社会に出て、幾多の困難に出合う。その時に尻込みして逃げてはならない。困難に立ち向かい、勝ち抜くまであきらめるな ―― 。そう教えたかったのだ。
私が会社を興す時、一番反対したのも母だった。兄たちが銀行融資の連帯保証人になったので、もし事業が失敗したら一族が破滅してしまうというのだ。しかし、社長になるのは小学生の頃からの夢だった。そんな熱い思いを訴えると、母親もついに折れた。その時、母親と約束を交わした。
「どうしてもやるというのなら、人の倍働くと約束してくれるか。私は人の倍働いてきたから自作農になれた。人の2倍働いて成功しないことはない。倍働きなさい」
創業以来、私は母のこの教えを守ってきた。
いまは「一番」が“一人勝ち”する時代
現代は、あらゆる分野で「一番が一人勝ちする」時代である。かつてはいずれのマーケットでも上位4社ぐらいが利益を確保し、4~6位でも生き残れた。しかし、いまではシェア1位が全体の6割以上の利益をもっていく。2位が残りの半分をとり、3位で収支トントン。それ以下は赤字だ。勝ち組と負け組などという生やさしいものではない。圧勝組と惨敗組に分かれてしまうのだ。
私は、一番をめざすという姿勢を崩さずにきた。製品の品質と精度はもとより、シェアも1位をめざして努力を重ねる。「二番でもいい」などと考えていたら、あっというまに三番以下になる。現代社会は、まさに「一番以外はビリ」なのだ。
真似だけでは人を超えることはできない
一番をめざすための第一歩は、その分野のトップランナーを研究し、真似ることである。しかし、真似るだけでは「同等以下」にしかなれない。そこに独自の強みを注入することが必要になる。