2005年4月号掲載
マーケティング10の大罪
Original Title :Ten Deadly Marketing Sins:Signs and Solutions
著者紹介
概要
活発な著述活動を続けるコトラー教授。本書では、マーケティングを失敗に導く「大罪」を列挙し、個々への対応策を説く。理論家にとどまらず実際にコンサルタントとしても企業を指導した氏の経験に基づく、教科書というよりも処方箋的な内容になっている。マーケティング担当者は、この「10の大罪」をじっくり吟味する“必要”と“価値”があるだろう。
要約
蔓延するマーケティング上の欠陥
このところ、ビジネスの現場におけるマーケティングに勢いがない。マーケティング計画に基づいて投入されている新製品や新サービス、新規事業の、実に75%が失敗しているのが現実だ。
では、今のマーケティングのどこに欠陥があるのか? 調査の結果、次の10の要因が、市場での成功を阻んでいることがわかった。この「10の大罪」について企業が考慮すべき点は、自分たちが罪を犯している「兆候」は何か、問題を解決する上で最善の「解決策」は何か、ということである。
①市場の定義が不明確で顧客主導になっていない
〈兆候 〉
- ・市場セグメントを絞り込めていない
- ・市場セグメントの優先順位づけが不十分
- ・セグメント・マネジャーを任命していない
多くの企業が、市場を異なるセグメントに分けている。だが、問題は、各セグメントの魅力度を客観的に把握しているかということだ。例えば、セグメントに優先順位をつけ、最も収益性の高いものに注力すべく資源を再配分しているだろうか。
【解決策】
まず念入りにセグメンテーションを行い、セグメントに優先順位をつける。そして、重要セグメントには、専任マネジャーをつける。
また、顧客セグメントが千差万別という場合は、営業チームを専門化する必要がある。
〈兆候〉
- ・大半の社員が、顧客への奉仕はマーケティングと営業の仕事と考えている
- ・顧客志向を高める社員教育の場がない
これらの現象が見られたら、顧客に十分なサービスと満足感を提供できていない可能性がある。
研究者は研究室にこもり、生産技術者は工場で作業にあたる。これらの社員が、顧客の相手をするのは別の部署と考えるのも無理はない。
だが、どのような部署であれ、顧客との関係を悪化させる可能性を秘めている。製品の質が悪かったり、納期が遅れたりすれば、当然顧客は怒る。
【解決策】
企業の価値観を明確に示して、その最上位に顧客をすえ、社員の「顧客意識」を高めるための活動を行う。また、顧客が電話、ファクス、電子メールなどで手軽に問い合わせ、提案や苦情の申し立てができる体制を整える。
②ターゲット顧客を十分理解していない
〈兆候〉
- ・売上が予想通りに伸びない
- ・返品率や苦情率が高い
【解決策】
このような兆候があるのは、顧客に関する情報が不足しているからだ。
顧客に関する深い洞察を得るには、より高度な顧客リサーチ手法を活用する必要がある。