2005年5月号掲載
意思決定のための「分析の技術」 最大の経営成果をあげる問題発見・解決の思考法
著者紹介
概要
賢い判断と選択のためには、何よりも「分析」が必要になる。そしてそれは、技術として学び、実践することで身につけられる――。コンサルタントとして多くの企業事例に接してきた著者が、その経験をもとに、正しい経営判断を導く「分析の技術」を説く。この技術が個人の意思決定においても役立つことは、言うまでもない。お薦めのロングセラー書である。
要約
分析の「4つの基本」
分析とは何か? それは「物事の実態・本質を正しく理解するための作業」の総称である。
では、何のために分析するのかというと、「正しい認識・判断」により「正しい対応」をするためである。だが、人はとかく「勘による判断」「情緒的な対応」をしがちだ。現象を漠然と捉え、十分に本質を見極める努力をしないことが多い。
分析には、確かな切り口と方法論がある。その基本は、以下の4つである。
①「大きさ」を考える
分析を始めるにあたっては、まず事象の「大きさ」を正しく認識しなければならない。
そのカギとなる考え方が「大きさの程度(オーダー・オブ・マグニチュード)」だ。
これは細部を論ずる前に、全体の大きさの程度をおおまかに把握し、重要度の判定をした上で、その順に応じて手をつける、というものである。
この考え方は、経営判断をする際に重要な意味を持つ。例えば、北九州市にあるテーマパーク「スペースワールド」を建設する際、東京ディズニーランドを指標に収益性を試算したという。だが、その試算は次のように無理のあるものだった。
対象となる市場の規模を考えると、東京都の人口は1000万人以上。その周りに千葉・神奈川・埼玉などがあり、日帰りでディズニーランドを利用できる対象人口は3000万人を超える。
これに対し、北九州市は人口100万人。日帰りできる範囲を入れても、対象人口は東京の10分の1、300万人にも及ばない。
また、集客力の中核となる「ブランド効果」についても、ディズニー映画の知名度の高さなどを考えると、両者の差はあまりにも大きい。
このように、オーダー・オブ・マグニチュードが違うものは、同レベルで比較できないことを、正しく理解しておくべきである。