2005年8月号掲載
最高の自分を生きる 達人たちに学ぶ「zoneに入る」生き方
著者紹介
概要
本書の副題は、「達人たちに学ぶ『zoneに入る』生き方」。スポーツであれ、技芸であれ、達人と呼ばれる人々は、ただ多くの練習をしたから一流になれたのではない。では、いかにしてそこに至ったのか? 本書は、「ゾーンに入る」という現象を手がかりに、その秘密に迫る。それを知ることで、我々凡人もまた、自らを輝かせ、よりよく生きる道が開ける!
要約
「ゾーン」とは何か?
「ゾーン」という言葉がある。それは「実力がフルに発揮できる理想的な心の状態」「精神的にも肉体的にもまるで自動操縦されているように感じながら、最高のプレーができる状態」をいう。
このような状態は、スポーツに限らず、日常生活や仕事の上でも経験することがある。物事がトントン拍子に進む。今までできなかったことが、ある日突然、できるようになる…。
そういう時、喜びや達成感とともに、自分を超えた存在を感知せずにいられなくなる。
だが、ただ漫然と日々を過ごしていても、ゾーンは経験できない。そこに至るまでには、練習なり稽古なりを積み重ね、工夫や試行錯誤する道のりがある。
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ゴルフの全米オープンチャンピオン(1981年)であるデビッド・グラハム選手は、自著で次のような体験談を披露している。
「後になって、あの日、私は“ゾーン”とか“バブル”とか呼ばれている状態に入っていたのだということに気がついた。この状態に入ると、あらゆることが夢見心地で静かに経過し、まるで催眠にかかったような感じになり、そのくせ心も体も完全にコントロールされているのである。(中略)私は、自分がものすごいプレッシャー状況にいるということに気づかなかったのである。ミスショットをしても、その結果について少しも悩まなかった。(中略)その時の私は、精神的にも肉体的にもまるで自動操縦されているような感じだった」
このように、強烈なプレッシャーもミスショットも忘れた夢見心地にありながら、最高に満足が行くプレーができる状態は現実にある。
ゾーンに至ると、選手は最高に集中していながら、同時に最高にリラックスしている。自分でプレーしているのだが、自分とは別の何者かに操られているような、主体の喪失感がそこにはある。それが、「ゾーンに入る」ということなのだ。
ゾーンに入ると遺伝子はONになる
人の細胞は、およそ60兆個あるという。その細胞1個の核に含まれている遺伝子の基本情報量は、30億の化学の文字で書かれている。