2006年1月号掲載
ザ・サーチ グーグルが世界を変えた
Original Title :The Search
著者紹介
概要
何か知りたいことがあると、すぐにパソコンの検索エンジンで探す ―― 最近、そんな人が多いのではないか。本書が取り上げる“グーグル”は、そうした検索エンジンの中でも突出した存在だ。彼らは今、我々の想像を超える勢いで進化を遂げており、ビジネスのルール、そして我々の文化をも書き換えようとしている。そんな検索ビジネスの現状と未来を克明に描く。
要約
意志あるデータベース
毎日、数百万という世界中の人々が、欲しいこと、不安なこと、したいことを、グーグル・ドットコムの白い画面に打ち込んでいる。
誰かの紹介で見知らぬ男性とのデートを待つ女性は不安そうに「マイケル・エバンズ 犯罪歴」と打ち込む。家探しをしている人は「ウェストミンスター郡 汚染 環境保護局」と入力して、現地の環境汚染について調べる…。
ヤフー、MSN、AOLなどの検索ボックスも同じで、何十億件という人類の思考がオンラインの質問となって、何百というサーバーに殺到している。
我々は、クリックするごとに、極めて意味深い文化の産物を創り上げているといえる。それは、「意志あるデータベース」というべきものだ。
意志あるデータベースとは、実施された検索と結果として出てくるリスト、そしてたどったパスの総体である。あらゆる欲望・好み・選択がクリックの大河となって殺到し、発見され、保管され、様々に活用され、データベース化される。
今後10年間でインターネットは、テレビや自動車などチップを取り付けられる全てに広がり、それらが連結点となって、増殖し続ける意志あるデータベースをつなぐだろう。そしてこの構造は、新しい文化現象の苗床となるはずだ。
検索はまた、人類にとって最も困難な問題を解決する触媒になるだろう。すなわち「人工知能」の開発である。検索に関する数々の謎を解き明かすにつれて、人間のように知的活動のできるコンピュータを創造できる可能性が高まるのだ。
「検索エンジンが映画『スター・トレック』に登場するコンピュータのようになればいい」と、グーグルで社員番号1番のクレイグ・シルバースタインは言う。「話しかけたら、何を尋ねているか理解できるようなコンピュータにね」。
しかし、検索が知能を備えるためには、リクエストを理解できなければならない。
コンピュータ科学者のダニー・ヒルズは、検索エンジンの未来は、単にものを発見することではなく、人間が本当に探しているものを理解できるか否かにかかっていると主張する。そして、こう言う。「間違いなく検索エンジンは知能を持つことができます。今それが始まっているのです」。
アルゴリズム(コンピュータによる演算方法)を駆使して、すでにウェブ上の至るところにある知能を利用すれば、検索エンジンは容易に知能を備えられるだろう。