2006年4月号掲載

ロウアーミドルの衝撃

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著者紹介

概要

90年代後半から始まった所得の減少に伴い、“総中流社会”が崩壊した。今や日本人の8割が、年収600万円以下の「ロウアーミドル(中流の下)」以下に属する。すなわち、人口分布が中低所得層と高所得層にピークを持つ、M字型の階層社会へ日本は移行した。このM字型社会では、ビジネスや社会、経済はどう変化するのか? 豊富なデータをもとに、その姿を描く。

要約

「景気回復」に騙されるな

 GDPが上向きになり、株価も回復し始めるなど、日本の景気は良くなったかに見える。だが、デフレは明確には解消されず、サラリーマンの給料は減り続け、生活は苦しくなるばかりだ。

 こうした矛盾が生じた原因は何か? 簡単にいえば、これまでの経済や社会を語る“常識”が、今の日本には通用しなくなり始めていることだ。

 例えば、バブル崩壊後の経済低迷を、ほとんどの日本人は「不景気」だと思い込んできた。だが、本当にそうなのだろうか。

 不景気という概念は、「景気の良い時期と悪い時期は循環する」という景気循環説の理論に基づいている。だから、今は不景気でも、我慢していればまた好景気になると考えるのだ。

 その際、金融政策によって、不景気を脱する時期を早めることもできるというのが常識とされている。しかし、現実にはいくらゼロ金利を続け、マネーサプライを増やしてお金をジャブジャブにしても、経済は一向に上向かなかった。

 この結果から導き出されるのは、「日本経済の低迷は、景気の問題とは全く関係がない」という結論である。

 また、今の日本では、お金がジャブジャブになってもモノが流通していない。経済がカネを吸収しない時代なのだ。その理由は、「モノをあまり必要としない高齢者の増加」「在庫を必要としないジャスト・イン・タイムの生産方式への転換」「将来への不安から、モノよりカネを握っておこうとする消費者心理」の3つである。

 つまり、経済学が前提としていない状況が、3つ重なって起こっているのだ。

 ボーダレス化が進んで、資金やモノの流通が簡単に国境を越えるようになると、もともとモノの価格が高かったところには、世界中から良質かつ低価格のモノが流れ込んでくるようになる。

 我々が今、デフレと呼んでいるのは、実はデフレではなく、「物価の正常化プロセス」にすぎない。

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