2023年10月号掲載
消齢化社会 年齢による違いが消えていく! 生き方、社会、ビジネスの未来予測
- 著者
- 出版社
- 発行日2023年8月12日
- 定価968円
- ページ数221ページ
※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。
※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。
著者紹介
概要
今や若者と高齢者の意識や価値観はそれほど変わらない!? 博報堂生活総合研究所の30年におよぶ調査で、年齢による違いが小さくなること、すなわち「消齢化」の傾向が確認された。生き方しかり、家族観しかり、消費意識しかり。本書はこうした変化の背景を分析するとともに、消齢化がさらに進んだ未来の社会を予測する。
要約
「消齢化」の発見
80代からプログラミングの勉強を始めた人、昭和のヒットソングをカラオケで歌う若者…。
最近、年齢にとらわれず新しいことに挑戦したり、自分らしさを追求したりする人を目にする機会が多い。何となく、生活者の年齢と意識・価値観の関係性が薄れてきたと感じないだろうか。
「生活定点」のデータをよく見ると
私たちは、そんなふうに肌で感じていた社会の変化が、データ上に表れていたことを発見した。
始まりは、私たちが1992年から実施する長期時系列調査「生活定点」だった。このデータを20年、30年という長期的なスパンで見ていくと、その多くで、ある特徴的な動きが観測されたのだ。
例えば、「将来に備えるよりも、現在をエンジョイするタイプである」という生き方についての項目に対する回答がある。それを見ると、男女全体(20~69歳)の回答は、1992年は39.0%、最新の2022年は41.4%であり、30年間ずっと変化していないようにみえる。
だが、年齢に注目して見ると、1992年時点では年代別の数値に幅が開いていたが、その差が年々近づいているのだ。具体的には、若年層で「今をエンジョイしたい」という意識が減少する一方で、高年層ではその意識が増えていて、結果的に年代間の違いが小さくなっているのだ。
一部の分野で起きているだけ?
他にも、「夫婦はどんなことがあっても離婚しない方がよいと思う」と答えた人は、2002年には60代が50.2%と高かったが、直近では19.4%と大幅に減少している。20代も、2002年は25.8%だが、2022年には11.7%となっている。従来の結婚規範に縛られない人が増えた結果、考え方の違いは小さくなっているようだ。
また、「消費意識」の分野では「車にお金をかけたい」という項目、「働き方」の分野では「男性でも育児休暇をとるべきだと思う」という項目など、実に幅広い分野で年齢による違いが小さくなっていることが確認できた。
これらのデータが示すこと。それは、30年という時間をかけて、生活者の年代に基づく価値観や意識の違いが小さくなっているということだ。
これは、無視できない大きな潮流である。私たちは、この現象を「消齢化」と命名した。