2006年4月号掲載
解決志向の実践マネジメント 問題にとらわれず、解決へ向かうことに焦点をあてる
著者紹介
概要
すでに欧米では、マネジメントの基本的発想法として注目を集めている「ソリューションフォーカス(解決志向)」。その基本哲学から具体的手法まで、多くのケーススタディをもとに解説した1冊。米国生まれの手法だが、不思議と、日本人の心情に適している。しかも、日本の経営、ビジネス環境に合わせて解説されているので非常に実践的である。
要約
「SFA」の基本哲学
人は問題に行き当たると、まずその原因を追究する方向に志向し、「何が悪いのか」などという思考をめぐらせがちである。
これは当然のことで、もの作りや事故調査の場面などでは、原因を徹底的に分析する必要がある。
しかし、人や組織に関する問題の場合、同じように原因を追究すると、犯人探しや責任のなすり合いになることも少なくない。このため、問題を解決するどころか、こじれてしまうことになる。
こうした「問題志向」の対極に位置するのが、「ソリューションフォーカス(解決志向)・アプローチ」(SFA)である。問題を深く分析する代わりに、「どうなりたいか」という未来のイメージを作る過程を先行させ、そこから具体的な行動を変化させるよう導く手法である。
例えば、部下が期待通りの仕事をしていない場合、「ここまで何はできていて、これから何ができる可能性があると本人が思っているか」を一緒に確かめていくという立場で接する。
このSFAの基本哲学は、次の3つである。
① 壊れていないものを直そうとするな
基本哲学の1つめは、問題を抱えている人を「壊れている」「だから直さなければならない」と捉えるな、ということである。
例えば、書類の提出期限を守れなかった人に、「壊れているものを直す」という発想で対応すると、「意欲のないダメ社員だ」などと、相手の悪い部分を固定化するような言い方になりがちだ。
一方、解決志向の発想では、「どうしたの?」→「時間が足りなかったんです」→「どこまではできたの?」というように、相手の「壊れていない」部分、「できているところ」に焦点を当てる。
つまり、書類は提出できなかったが、相手に一定の「やる気」「能力」があると認め、能力発揮の条件を整えればよい、と捉えるのである。
② うまくいっていることを見つけ、それを増やす
保育園に子供を迎えに行くと、「帰りたくない。もっと遊ぶ」と言ってぐずるので、ついキレてしまい、子供を強く叩いてしまう母親がいた。