2006年4月号掲載
素直な心になるために
著者紹介
概要
戦後、日本人は努力の末、物質的な豊かさを手に入れた。だが一方で、自己の利害のために他人を無視し、争うなど、必ずしも心豊かに暮らしているとはいえない。著者・松下氏は、その原因は「素直な心」の欠如にあると指摘。自他ともに幸せになる上で欠かせない、素直な心とはどのようなものか、そして、いかに養えばよいかについて、柔らかな語り口で説く。
要約
素直な心の内容10カ条
人は皆、豊かに、幸せに暮らしたいと願っている。ところが、現実にそういう姿が実現されているかというと、必ずしもそうではない。
その原因は色々あるだろうが、結局、人間の生き方に問題があるのではないか。
自らの願いを実現するためには、それにふさわしい考え方、態度、行動を表すことが肝要である。
そして、その根底をなすものが、「素直な心」である。
では、素直な心とはどのような心か。それは、例えば次のような心のことである。
①素直な心とは、私利私欲にとらわれることのない心、私心にとらわれることのない心である
私心や、私利私欲を求める心というのは、人間が生きているからには当然ある。だが問題は、私利私欲の奴隷になってはならないということだ。
素直な心になったならば、もちろん私心は働くが、それにとらわれることなく、他の人々のことも十分に配慮する、という姿になる。
②素直な心とは、誰に対しても何事に対しても、謙虚に耳を傾ける心である
戦国時代の武将、黒田長政は月に2、3度、“腹立てず”の異見会という会合を催していた。
家老をはじめとする参加者は、会合の前に、何事を言おうとも“腹を立ててはいけない”というルールを誓い合い、その上で長政の悪い点、国の仕置きで道理に合わない点などを言い合った。
長政がこの会合を続けていたのは、自分自身の不完全さを自覚していたからではないか。その自覚があったからこそ、家来からの指摘でも受け止めるという謙虚さが生まれてきたのだろう。
③素直な心には、万物万人一切を許しいれる広い寛容の心というものも含まれている
寛容とは、広い心をもって、よく人を許しいれるということである。また、人の過ちに対して厳しく咎め立てしないことである。