2007年5月号掲載
「超」リタイア術
著者紹介
概要
高齢化社会は、とかくマイナスイメージで語られることが多い。しかし、退職後の自由な時間が長くなるのだから、考えてみれば素晴らしいことだ。「リタイア後」とは、熟年世代に与えられた時間・財力・理解力という三種の神器を手に、自分が本当にやりたかったことをやる時 ―― 。そう語る著者が、先達の暮らし方を紹介し、さらに現代の年金改革を提案する。
要約
リタイア後は実りを収穫する時
リタイアとは、仕事をやめることではない。
それは、「自分が本当にやりたいことをすること。若い時には様々な制約でできなかったことをすること」と捉えるべきである。
「やりたいこと」の中には、仕事も含まれる。ただしそれは、収入を得、家族を養うためにすることではなく、自己実現のために行うものだ。ここが、若い時代の労働と基本的に異なる点である。
2つの人生を生きた人たち
世界には、実業生活を終えてから学問に志し、大きな成果を挙げた人が大勢いる。
彼らは、経済的基盤を作り上げるための人生の前半と、そこで築いたものを用いて若い時に抱いた夢を実現する後半という、2つの人生を生きた。
第2の人生は、「リタイア後」というよりは、むしろ人生の目的そのものといえるだろう。
ドイツの考古学者ハインリッヒ・シュリーマンは、少年時代にホメロスの物語を読んで魅了され、トロイア発掘を志した。しかし、家が貧しかったため、中学校を終えると職を転々とした。
やがて巨万の富を築いて引退し、48歳の時に最初のトロイア発掘を行った。そして、実在しないとされていたホメロスの都を発見したのである。
日本では、伊能忠敬だ。少年時代に商家の伊能家に養子入りし、傾きかけていた家業を再興した彼は、隠居後、数え年で50歳を過ぎてから江戸に出て、西洋数学、天体観測学などを学んだ。そして、55歳から17年にわたって全国測量を行い、「大日本沿海輿地全図」を作成した。
彼も、少年時代から計算や天体観測に興味を持ち、第2の人生で、その夢を実現したのである。
熟年世代の「三種の神器」
ゲーテは、82歳の死の直前まで、『ファウスト』の完成に身を捧げた。没頭できる対象を最晩年においても持つというのは、大変恵まれたことであり、普通の人には望みえないように思える。