2007年8月号掲載
みんな力 ウェブを味方にする技術
著者紹介
概要
インターネット、とりわけ“Web2.0”によってマーケットには大きな変化が訪れた。発信者と受信者であった企業と消費者は対等な関係になり、そして消費者同士はつながり合い、皆でイノベーションを起こす、そんな時代がやって来たのだ。だから、今こそ企業は皆の力を活かすべき ―― 。そう主張する著者が、その「みんな力」を味方にする企業戦略を説く。
要約
Web2.0がもたらした変化
かつて市場は戦場だった。いかにして敵よりも多く陣地(シェア)を奪うかの戦争だった。
消費者をとらえるため、企業は戦略を練り、実行した。そして、その戦略によって消費者はオセロのコマのようにひっくり返された。自分以外のコマが何を考えているのかを知ることもなく。
しかし、消費者はインターネットによって、自分以外のコマと情報を共有する手段を得た。
このインターネットの世界から、知識を積み重ね、伝達するネットワーク、語り合う場、相互作用しながら問題解決をするシステム、そういう力が生み出されてきた。これを「みんな力」と呼ぶ。
今、ウェブの世界では、我々が未経験の変化が起きている。Web2.0がもたらしたパラダイム・シフトは、我々の日常にも変化を及ぼし、市場にも大きなうねりとなって表れている。この大きなシフトの特徴は、次の4つの言葉にまとめられる。
・フラット化
Web2.0の代表的なメディアであるブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)によって、誰もが発言し、コメントを残せるようになった。そのため、情報の送り手と受け手という役割分担が薄れ、両者の関係がフラット化した。
・見える化
CGM(消費者生成メディア)と呼ばれる掲示板やブログが発達したことで、世界中のあらゆる情報が見られるようになった。
・つながる化
書き込み、メール、コメント、リンクなどの方法により、地理的な条件や性別、年齢、職業などを全て飛び越え、人と人がつながることができる。
・“昔”化
高度成長の過程で、地縁や血縁が薄まり、昔ながらの助け合いの関係が失われた。そんな中、インターネット上に助け合うシステムが再生された。困り事を書き込むと、誰かが善意で応えてくれる。Web2.0の流れには日本が経済成長の過程で失ってきたものを再生させた、という側面もある。
これまでの常識が逆転する市場
インターネットが作り出した新たな世界は、そのあり方が、今までの世界とはまるで違う。