2007年11月号掲載
ヒトデはクモよりなぜ強い 21世紀はリーダーなき組織が勝つ
Original Title :The Starfish and The Spider:The Unstoppable Power of Leaderless organizations
著者紹介
概要
強い組織とはいかなる組織か? それは、権限が分散した組織である。強い組織は、まるでヒトデのように、秩序も意思決定を行う機関も持たない。中枢を持たないゆえに、どこまでも増殖する ―― 。このように指摘する著者が、今、市場などで急速に力を増しつつあるこのヒトデ型組織を徹底解剖。21世紀に生き残る組織作りのヒントを提供する。
要約
MGMの失敗とアパッチ族の謎
2005年3月、巨大エンタテインメント会社MGMは、コロンビア、ディズニーなどの大企業とともに裁判を起こした。訴えた相手は、グロックスターという小さな会社である。
グロックスターは、P2P(ピア・ツー・ピア)と呼ばれるサービスを提供する会社だ。ユーザーはそのサービスを使って、ネット上の音楽や映画のファイルを無料でシェアすることができる。
こういうサービスの問題点は、提供されるのが全て正規のコンテンツではないことである。要するに、ユーザーは音楽を盗んでいるのだ。
この騒ぎはそもそも、裁判の5年前、音楽に金を払いたくない無名の大学生が「ナップスター」というファイル交換サービスを行う会社を設立したことに始まる。
同社はレコード会社から直ちに訴訟を起こされ、敗訴した。そして、2003年には倒産する。だが、その後もこうしたサービスは増え続けている。
レコード会社は、歌曲をダウンロードするユーザーを著作権侵害で訴えると脅し、P2Pサービス会社を潰すために裁判を起こし、勝訴し続けている。にもかかわらず、音楽の違法流通の問題はいっこうに改善していない。なぜなのか?
こうした音楽業界の現象を理解するには、古い部族についての研究が役に立つ。
—— 1532年、フランシスコ・ピサロ率いるスペイン軍は、インカ帝国の皇帝を処刑し、傀儡政権を樹立した。この文明をわずか2年で滅ぼしたスペイン軍は、その後、南米大陸を手中に収め、1680年代までに、誰にも止められない勢力になっていた。
そんな強大なスペイン軍を破ったのは、一見原始的なアパッチ族という部族である。
アパッチ族が、インカにはなかった秘密の武器を持っていたわけではない。彼らがスペイン軍を破った理由は、彼らの社会構成に秘密があった。
組織には、中央集権型と権限分散型という2つの正反対の制度がある。