2007年11月号掲載
京都花街の経営学
著者紹介
概要
かつては日本各地で賑わいをみせた花街も、今日、その多くが姿を消した。そんな中、京都花街は江戸時代の頃より活気を保ち続け、舞妓さんは京都観光の象徴となっている。その理由は何か。本書は、社会科学的な視点から、京都花街の経済規模、事業を支える暗黙のルール、人材育成システムなどの事業の仕組みを明らかにし、350年も存続してきた秘訣を探り出す。
要約
京都花街の経済規模
芸妓さんや舞妓さんらが働く「京都花街」。
ここは、江戸時代にはすでに、お客をもてなす歓楽街としてだけではなく、一流の文化に支えられた観光地としても栄えていた。
そんな長期の伝統を持つ花街とは、どのようなところなのだろうか?
花街の経済規模
花街の事業規模については正確な統計がなく、その経済的な規模を特定することは難しい。
そこで、とりあえず、花街全体の事業規模のベースとなる芸舞妓さんの「花代」を試算してみると、次のようになる。
お座敷を利用すると、料理や飲み物の他に、芸舞妓さんにかかる費用が請求される。これが「花代」で、時間単位で1本、2本と数えられ、1本当たりの単価×本数でカウントされる。
この花代は移動時間にもかかる。つまり、(移動時間+お座敷での時間)×時間単価=花代、という計算方法が原則である。
それで計算すると、芸舞妓さん1人当たりの売上は、1日平均12万円程度となる。
そして、お座敷に出られるのが年間300日程度、稼働率を80%程度とすると、1人当たりの年間総花代は、12万円×300日×0.8=2880万円になる。
京都花街の芸舞妓さんの人数は273人(2007年2月現在)なので、2880万円×273人=78億6240万円という総花代が推計できる。
これはあくまでも花代だけの試算であり、この他にも料理代や髪結いさんへの支払いなど、花街全体ではこの数倍の金額が動いていると思われる。