2008年12月号掲載
「右腕」を育てる 実践コーチング
著者紹介
概要
経営環境が急速に変化し、複雑化する今日、企業のトップにとり、優秀な右腕の存在は欠かせない。だが現実には、なかなか見つからず、育てられないのではないか。本書では、右腕となる人材を的確に選べるよう、必要とされる資質や、果たすべき役割を具体的にアドバイス。そして、選んだ人材を優秀な右腕に成長させるコーチング手法を、事例を挙げつつ解説する。
要約
なぜ、右腕が現れないのか?
本田宗一郎と藤澤武夫、井深大と盛田昭夫…。強い組織にはリーダーを支える人物の存在がある。
彼ら「右腕」の役割は、近年ますます重要になっている。だが、実際には有能な右腕はなかなか現れない。その理由は、次の4つである。
①BQが低い人を右腕にしようとしている
まず「BQ(ビジネスにおける知能指数)」が低い人を右腕にしようとしているということがある。
ビジネスの基本的な能力に欠ける人は、「自分に対して自信がない人」「協働力がない人」の2タイプに大別できる。
前者は、自分に自信がないため、逆に自分を正当化しようとして、相手を容赦なく攻撃したり、他者を見下したりする。後者は、チームで力を合わせて目標を達成しようという意欲に欠ける。
こうした人たちでは、トップをサポートするどころか、組織をあらぬ方向に導いてしまう。
②「思考の枠」が固い人を右腕にしようとしている
2つ目の原因として、思考の枠が固い人を右腕にしようとしているということが挙げられる。
人は誰しも「自分の都合のいいように考える」「聞くより、話すことに意識が向く」などの思考の枠を持っている。右腕に適さないのは、この思考の枠が固い人 ―― 次の3つの特徴を持つ人だ。
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- ・自分が絶対に正しいと思っている
- ・自分の行動変革をしない
- ・自分以外が問題だと思っている
こうした人を右腕にしても、組織は成長しない。
③“今”必要な右腕の人物像を描けていない
3つ目は、トップが必要だと思う右腕の人物像が明確ではないということだ。
右腕の人物像が描けないのは、トップが自分の強み・弱みをわかっていないからだ。そのため、“今”どんな人物を右腕とすればいいかがわからず、結果として右腕が出てこないことになる。