2009年5月号掲載
俺は、中小企業のおやじ
著者紹介
概要
いち早くインド市場に進出し、大成功を収めるなど、積極的な海外展開で注目を集めるスズキ。その会長兼社長を務めるのが、現在も強力なリーダーシップを発揮し続ける鈴木修氏だ。氏はどのような経営をし、同社を“3兆円企業”にまで育て上げたのか?「スズキはまだまだ中小企業」と自戒する氏が、苦境を乗り越えた経験とともに、経営の要諦を語る。
要約
今が最大の危機
会社経営について、1つの確信がある。
企業は一時的に順調でも、いつまでも順風満帆で成長していけるものではない、ということだ。
周期的に危機が訪れ、その波に飲まれると、最悪の場合は倒産する。周期の長さは、大体25年ほどだろう。その危機が今、スズキに訪れている。
過去30年でスズキの売上高は10倍に増えた。それでも、最初の頃の成長は遅々としたもので、社長就任時3232億円だった売上を1兆円の大台に乗せるまでに12年、1兆円から2兆円まで伸ばすのにも12年かかった。
ところが、2兆円から3兆円までは4年で達成してしまった。明らかに身の丈を超えた成長だ。
会社が大きくなったからといって実力が付いたわけではない。筋肉や臓器が十分に発達していないのに、身長だけが伸びたようなものだ。内部にいれば、その危うさを感じないわけにはいかない。
最大の問題は、人材の不足である。もっと早く人材を育てておくべきだった。さらに、これに拍車をかけるように、米国発の金融危機が起こった。
問題は、危機が25年周期でやってくるため、前の危機が起きた時のことを知っている社員がほとんどいない、ということだ。だから、ほとんど誰もが減産を経験したことがない。そのため、何をしたらいいかわからず、慌てふためいている。
危機は常に社内にあり。このような時こそ、己を見つめ直すチャンスである。
スズキの経営方針
スズキは、1979年発売の「アルト」の大ヒットにより、軽自動車のシェアナンバー1に立った。