2009年5月号掲載
ぶれない経営 ブランドを育てた8人のトップが語る
概要
吉田カバン、ジャパネットたかた、星野リゾートなど、今輝いている8つの企業のトップが、自らの経営哲学を披露する。業種は違えど、彼らに共通するのは、経営の軸がしっかりしていること。ゆえに環境の変化に自在に適応しつつも、ぶれることがない。そうした「ぶれない経営」を実践する彼らの言葉からは、激変するビジネス社会を生き抜くヒントが読み取れる。
要約
“ぶれない”ための経営哲学
会社とは「ゴーイングコンサーン」、すなわち持続的に活動する組織である。
従って、短期的にでも儲かればいいという姿勢は本来の姿とは言えない。一方で、長期的な持続性を目指すといっても、事業を続けるだけの利益を出し続けなければ、単なるきれいごとで終わる。
今日のような経済環境では、このジレンマに直面する企業も多いだろう。
そうした中、独自の輝きを放つブランドを育てた企業がある。これらの企業の経営者は、どんな経営観を持って経営にあたってきたのか ―― 。
吉田カバン
(株)吉田、通称・吉田カバン。同社は創業以来、国内での生産に限定するなど、技術面での強いこだわりを持ちながら成長し、日本の鞄業界の定番ブランドとしての地位を確立している。
吉田カバンは自社工場を持たない。鞄を作る職人は独立していて、個別に契約している。
職人には自分の会社を維持したいという意識がある。それが職人であり、そんな人たちと一緒に、かつ対等に作っているからこそいいものができる、と同社は考える。
このように職人に重きを置くが、現在、職人は減りつつある。そこで同社は、職人希望の社員を職人の下で修業させる、というやり方で職人を育成している。修業中の給料は全て同社が支払う。
品物は、全部メイド・イン・ジャパン。それにこだわる。周りから「中国で作れば、倍以上儲かるのに」などと言われたが、手を出さなかった。
結局、それでよかった。当時、中国になびいた会社で今残っている会社は大変少ない。
職人との緊密なものづくりができないと、作られるものは限られてくるし、一方で消費者の商品を見る目はどんどん肥えているからだ。