2009年6月号掲載
新しい資本主義 希望の大国・日本の可能性
- 著者
- 出版社
- 発行日2009年5月1日
- 定価770円
- ページ数189ページ
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著者紹介
概要
サブプライムローン問題に端を発する世界的な金融不況の中、それを招いた米国型資本主義への批判が強まっている。では、これからの資本主義はどうあるべきなのか? ベンチャーキャピタリストとして様々な活動を行う中で、市場万能・株主至上主義とは対極に位置する「新しい資本主義」を自ら実践する原丈人氏が、日本が今後進むべき方向を明確に指し示す。
要約
金融資本主義の崩壊は必然だった
米国発の金融危機は、世界経済の景色を一変させた。
だが、これは十分に予期できた出来事だった。そもそも、「産業の中心」にはなり得ない金融業が、わがもの顔でバブルによって拡大したがために、必然的に崩れが起きたのだ。
なぜ、本来は脇役であるべき金融が、ここまでの規模に拡大したのか?
1970~80年代、米国でIT産業が勃興した時はまだ、「まず産業ありき」であり、製品を作り、その製品を使って新しい産業モデルやサービス業を生み出そうとする夢と熱気に満ちていた。
その流れを金融は支援したが、その頃はまだ、あくまでも縁の下の力持ちだった。
だが、IT産業が90年代に一気に花開くと、この産業に投資をしていたベンチャーキャピタルなどの様々な金融業は膨大な利益を得るようになる。
その結果、金融だけで儲けた方が効率的という考えが蔓延し始める。そして、IT産業に必要以上の資金が流れ込み、ネットバブルが生じた。
この風潮に拍車をかけたのが、米国における成功の尺度であった。米国では成功はお金に換算される。優秀な人=稼ぐ人、なのだ。このため「賢い人は金融で効率的に儲ける」という発想になる。
だが、金融ばかりを大きくすればするほど、実業の部分はどんどん疎かにされ、力を失っていく。
そこで、「金融工学」なるものを駆使して、金が金を生む方法ばかりを加速させるしかなくなってしまったのである。
この金融工学が、また曲者である。なぜなら、「完全競争」「参入障壁はない」など、あり得ない話を前提に理論が構築されているからだ。