2009年7月号掲載
未来を創る エジソン発想法 非常識なアイデアが、大成功を生む
著者紹介
概要
トーマス・エジソン(1847~1931年)は、単なる「世界の発明王」ではない。幼い頃より金儲けの極意をつかんでいた彼は、世界初の「発明をビジネス化した起業家」 ―― エジソン・ゼネラル・エレクトリック(現在のGE)の創業社長でもあった。本書は、そんな彼が1914年から30年にかけて書き残した膨大なメモや日記から、その思考法、発想法を探ってゆく。
要約
現代に生かせるエジソンの知恵
トーマス・エジソンは、「世界の発明王」として人類史に不動の地位を占めている。取得した特許の数は1093で、これは一個人としては前人未到の記録だ。
その一方、メモ魔として知られる彼は、13歳の時から84歳で亡くなるまで、60万枚を超える実験メモや日記を書き続けた。
その日記には、現代のビジネスパーソンにとっても、現状を乗り越え、未来を創出していくヒントになる内容が満載されている。例えば ――
「不安の心理、何かを恐れるという心理的状態が、今の不景気の主たる原因なのだ」
エジソンがこの言葉を日記に記したのは、世界大恐慌の直前である。銀行は次々に倒産し、人々は未来に対し、疑心暗鬼に駆られていた。
これに対し彼は、不況を克服するには、まず問題の所在を明らかにし、それを乗り越えることができると自信を持つことが何より大事だと言う。
「不景気という状況であることは論をまたないが、それに心を痛めすぎたり、呑み込まれてはならない。…その規模が大きかろうと小さかろうと、目の前の金融パニックや経済危機は、長い歴史から見れば、繰り返し現れたり消えたりしているものなのだ」
恐れや不安に思うこと自体が事態を悪化させる、という見立てだ。
このエジソンの心理分析は、いたずらに恐怖の連鎖を起こして負のスパイラルに陥っている、現代の米国へのアドバイスのようだ。
「他の人よりちょっと注意深く考えることでお金を作ることができる」
南北戦争の時、14歳だったエジソンは各地の戦況を早く知りたがる大衆のニーズに目をつけた。
そして、鉄道員と仲良くして車内の無線電信を使わせてもらい、これで大都市に最初に入ってくるニュースを受信し、列車が移動する間に車内で新聞に仕上げて、着いた先の駅で売る、というビジネスを始めた。
情報を得られる自分の立場を、人々の「情報を早く知りたい」というニーズにつなげるにはどうすればいいか。彼は考えた末、情報を新聞という商品に変えて売るシステムを考案したわけだ。