2009年8月号掲載
戦略の失敗学 経営判断に潜む「落とし穴」をどう避けるか
著者紹介
概要
米国を後追いすればよかった1970~80年代、日本企業は、現場が頑張ればうまくいった。だが国際競争が厳しさを増す今、真面目に働くだけでは成功は難しい。戦略が重要だ。それも、失敗の確率の低い、したたかな戦略が ―― 。本書は、東芝、キヤノン等々の過去の失敗事例を分析し、失敗の原因を12に分類。経営戦略における落とし穴を避けるための教訓を提供する。
要約
失敗に至る12の根本原因
今日、日本では多くの企業が失敗している。例えば半導体、薄型大画面テレビなどが世界市場で劣勢になり、各社は苦境が続いている。なぜか?
それは、戦略に問題があるからだ。戦略がまずいから失敗するのである。
では、万全な戦略を築くにはどうすべきか?
経営戦略に関する書籍は多く出版され、戦略立案の方法が書かれている。だが、それは成功するための戦略だ。戦略の骨格を作るのに役立つだろうが、失敗の防止にはあまり役立たない。
必要なのは、過去の失敗に学ぶことだ。数多くの失敗事例を知れば、失敗を防ぐのに役立つ。
過去の日本企業の失敗を分析すると、次の12の根本原因にまとめることができる。
①人間の本質(心や行動)を理解できていない
人の心と行動を理解するのは、あらゆる事業の基本である。それができなければ、失敗に終わる。
その一例が、東芝のHD-DVDだ。
1990年代後半、東芝は高画質の映像を録画できるHD-DVDを開発した。ところが、ソニーなどが技術的により高度なブルーレイ・ディスク(BD)を開発し、競い合う事態となった。
この種の機器は規格統一が重要だ。だが、東芝は規格が統一できないまま事業化に踏み切った。
その背景の1つに、映画ソフト会社の雄で、付き合いの深いワーナー・ブラザースにHD-DVDを事前に提案し、賛同を得ていたことがあった。