2009年9月号掲載
シンプル族の反乱 モノを買わない消費者の登場
著者紹介
概要
日本に今、「シンプル族」という新しい消費者が増えている。若い世代、特に女性に多く、物をあまり買わず、手仕事を重んじる。そんな特徴を持つ彼らが台頭してきた背景には、消費者の価値観の転換がある。その転換とは何か。今後、企業が生き残るには、シンプル族の理解が不可欠だとする著者が、彼らの価値観やライフスタイルを、独自の調査に基づき解明する。
要約
シンプル族とは何か?
日本に今、新しい消費者が増大している。「シンプル族」という名の消費者である。
シンプル族は若い世代、特に女性に多い。彼らは物をあまり買わず、テレビもあまり見ない。インターネットで商品の情報を集め、慎重に吟味し、十分に納得した上でないと買わない。
一方で、ユニクロや無印良品のようなシンプルな物は好んで買う。
シンプル族は、単にお金がないから質素な倹約生活をしているわけではない。
消費者の価値観の大きな転換が、そこにはある。
自動車から自転車へ
日本の自動車の販売台数は、2008年のリーマンショックによって激減した。しかし、販売台数のピークはずっと前の1990年度である。
代わって軽自動車が売上を伸ばしてきたが、それも06年度をピークに減少に転じた。直接的には、ガソリン価格の暴騰が原因だ。しかし、心理的には国民の間にシンプル志向、エコ志向が拡大してきたこともかなり影響していると思われる。
このように自動車離れが進む一方で、自転車の販売は伸びている。自動車販売がピークに迫っていた89年には865万台だった販売台数は、ここ数年、1000万台以上である。
しかし、エコ志向、自転車志向は今に始まったことではない。70年代初頭にもエコロジー運動が盛り上がり、自転車を使ったエコロジーという意味で「バイコロジー」という言葉も流行した。
環境に優しいシンプルな暮らしを求める価値観は、その頃から広がり始めた。シンプル族の増大こそが、自動車から自転車へという動きを加速させているのである。
ここ数年の消費者調査で、商品を買う時どんなイメージの物を買うかという質問に対して、常に上位に位置するのが、「長く使っても飽きない」や「シンプル」である。