2009年10月号掲載
名言の正体 大人のやり直し偉人伝
- 著者
- 出版社
- 発行日2009年8月4日
- 定価814円
- ページ数260ページ
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著者紹介
概要
「余の辞書に不可能の文字はない」(ナポレオン)など、偉人たちの「名言」は様々なところで引用され、多くの人に影響を与えている。しかしそれらには、捏造されたものや発言の一部を切り取ったもの、誤って解釈されているものも多い。本書では、70余の名言を取り上げ、発言の背景や出典について解説。名言の裏に潜む意外な真実、偉人たちの素顔を明かす。
要約
名言に隠された意外な真実
時代を超えて、人々の沈んだ気持ちを励まし、奮い立たせてくれる「名言」。
だが、そんな名言の中には、本来の意味から外れて、誤解されて伝わっているもの、誇張、捏造されたものもある ―― 。
「健全な精神は、健全な肉体に宿る」ユウェナリス
この名言の意味は、そのままの「身体を鍛えれば、精神も健全なものになる」ではない。
この言葉の出典は、ユウェナリスの『風刺詩集』第10編にあるラテン語の一節で、“orandum est, ut sit mens sana in corpore sano”。
これが“a sound mind in a sound body”と訳されたため、「健全なる精神は、健全なる身体に宿る」と誤解を呼ぶことになった。
正しい訳は、「強健な身体に健全な魂があるよう願うべきなのだ」(It is to be prayed that the mind be sound in a sound body)だ。
これだけではよくわからないが、その前段を読むと本来の文意がつかめてくる。
ユウェナリスは、富豪になったがゆえの不幸、器量が良いゆえに降りかかる災難を挙げながら、「金持ちになっても、類まれな美貌を身につけたとしても、幸せにはなれない」と主張している。そして「人々は間違ったことばかりを神様にお願いしている」と嘆きながら、こう言っているのだ。
「何か願い事を神様にお祈りしたいのであれば、心身ともに健康であることを祈るがよい」
つまり、「何も欲しがらず、心も体も健やかであることだけを願いなさい」と、謙虚な姿勢を勧める言葉なのである。
「酒は百薬の長」王莽
これは、飲酒の効用を示す言葉としてよく用いられるものである。出典は、『漢書』の「食貨志」であり、「新」の皇帝であった王莽が下した、次のような詔の冒頭の一句から生まれた。