2010年4月号掲載
脳は『論語』が好きだった
著者紹介
概要
脳外科医の著者が、脳と『論語』の関係を分析した。それによれば、『論語』で説かれる「仁・義・礼・智・信」の5つの徳目と、脳の5つの代表的な使われ方(機能)は一致するとのこと。そして、その徳目を実践すると、脳の機能が高まり、認知症予防にもつながるという。人格を高め、より良く生きる。そのことの重要性を脳科学の見地から説いた、興味深い1冊である。
要約
脳には様々なタイプがある
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、それぞれの特徴を詠んだ有名なホトトギスの川柳がある。
鳴かぬなら「殺す」のが信長、「鳴かせてみせる」のが秀吉、「鳴くまで待つ」のが家康。彼らの人生を象徴するようなこれらの川柳は、彼らの脳の使い方の特徴をも表しているといってよい。
では、脳科学で、それらの特徴的な脳の使い方を証明できるだろうか。
脳の前頭葉の血流などの変化を測る機械を使って、人の脳血管の反応を調べてみると、その人の脳の使い方が予想できる。
例えば、本を読むのは苦手だが体を動かすのが好きな人は、右脳が左脳よりいい反応を示す。
すなわち、人には脳のある領域をよく使う癖があり、最新の脳科学の知見を基にその癖をタイプ分けすれば、その人の脳の使い方が脳科学的に分類できるのではないかと考えられるのである。
「前後」「左右」「上下」の領域別の分類
脳は、まず、次の3領域に分類できる。
・前後
後部の脳(頭頂葉、側頭葉、後頭葉)が情報を受動的に受け、前部の脳(前頭葉)がその情報を能動的に処理する。
・左右
左脳が合理的・論理的な脳で、右脳が情緒的・行動的な脳である。
・上下
脳の中心下方に大脳辺縁系という動物的な本能、保身に関わる脳(動物脳)があり、その上方・外側に、進化の過程で新しくできた大脳新皮質(人間脳)がある。
情報処理の3つの次元
脳には神経線維という大事な部分があり、感覚器から入った情報はここを通り各領域に運ばれる。