2010年5月号掲載
経営で大切なことは旭山動物園にぜんぶある 未来のスケッチ
著者紹介
概要
今や全国的な人気の北海道・旭山動物園。同園はかつて廃園の危機にあったが、それを乗り越え、今の成功をつかむカギとなったのが「未来のスケッチ」、飼育係が描いた理想の動物園の姿だった。苦しい時だからこそ夢を語る。それが勇気を呼び起こし、再生をもたらす ―― 。同園の復活劇を、本書は経営学的な視点から分析し、活力ある組織作りのためのヒントを示す。
要約
全ては「14枚のスケッチ」から始まった
旭山動物園は、北海道旭川市にある小さな市立動物園である。
パンダやコアラなど「スター」動物のいない同園は、かつて廃園寸前まで追い込まれた。だが、今や全国から観光客が訪れる人気動物園になった。
その復活の背景には、何があったのか?
厳しい時だからこそ「旗」を立てる
旭山動物園の再生を語る上で欠かせないのが、「14枚のスケッチ」である。
今から20年以上前、飼育係員たちが理想の動物園像について自分の思いやアイデアを出し合い、イラストにまとめたものだ。
飼育係員同士が「自分が担当している動物は、こんなところがすごい」と語り合うのを見て、当時の菅野浩園長が「展示施設のアイデアとしてまとめてみてはどうか」と提案した。それをきっかけに仕事の後、皆で集まってアイデア出しが始まったのだ。
メンバーは、自分で勉強した国内外の動物園の展示方法や動物の特性を紹介し合いながら、「こういう施設にしたら、動物のすごさがもっとわかりやすく伝えられる」と夢を語り合った。こうして広がったアイデアをイラストにまとめたのだ。
注目したいのは、スケッチが誕生した1989年は、同園が危機的な状況にあったということだ。
当時、来園者数の減少などにより大きな赤字を出しており、市の予算もカットされていた。
そんな苦しい時に夢を語るのは、容易ではない。
だが、厳しい環境を乗り越える時こそ、未来を指向するための「旗」が必要なのだ。それにより危機に立ち向かう力も湧いてくる。夢を語ることは、理想を実現する第一歩なのである。