2021年9月号掲載

Experimentation Works ビジネス実験の驚くべき威力

Original Title :Experimentation Works

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著者紹介

概要

新商品の開発であれ、ビジネスモデルの変更であれ、革新的なアイデアの実現は難しい。だが、その成否を予測する方法はある。仮説を立て、テストし、洞察を得ることだ。企業の競争力をも左右する、このビジネス実験をどのように行い、意思決定に活かせばいいのか。多数の企業事例を引きつつ詳述し、実験の威力を解き明かす。

要約

なぜ実験は有効か

 2011年、ロン・ジョンソンはアップルを辞めて、大手百貨店チェーンJ・C・ペニーのCEOに就任した。

 彼は、すぐに大胆な新計画に着手した。クーポンを廃止し、在庫一掃セールの棚を撤去し、店舗内に多くのブランドのブティックをオープンした。また、テクノロジーを活用し、レジやレジ係、カウンターもなくした。ところが売上は急減し、わずか17カ月後、ジョンソンは解雇された ―― 。

 かつてジョンソンは、ストア・コンセプトやレジ係のいらない支払方法などのイノベーションにより、店舗面積当たり世界最高の小売売上高をアップルにもたらした。その経験はどうなったのか?

 J・C・ペニーの取締役会は、彼がアップルで成し遂げた成功を再現することを期待したに違いない。それが叶わなかったのは、なぜだろうか。

データや直感には頼れない

 1つ挙げられるのは、多くのマネジャーは、イノベーションに関わる意思決定に反映させるだけのデータや経験が不足した環境にいることだ。すなわち取引データはあるが、その情報は顧客の過去の行動を解き明かすだけで、将来の変化に顧客がどう反応するかについてのヒントにはならない。

 また、しばしばマネジャーは直感に頼るが、真に革新的なアイデアは通常、経験とは相容れず、ほとんどはうまくいかない。顧客体験の改善であれ、新しい商品やサービスの開発であれ、どれほど熟練したリーダーでも間違うことは多い。

 しかし希望がないわけではない。マネジャーは、商品やサービスの変更が将来成功するか否かを把握することができる。それらを厳格な実験の対象とすることにより、将来予測が可能になる。

 例えば製薬会社は、科学的手法に基づく一連の実験を行うことなく、医薬品を市場に投入することは決してない。ところが、多くの会社が新たなビジネスモデルなどの変更をする際に行っていることは、本質的に「実験を行うことなく市場投入する」のと同じ行為である。

ビジネス実験は重要だ

 商品、顧客体験、ビジネスモデルを生み出して改善する企業の能力、言い換えれば競争力は、実験をする能力によって大きく左右される。

 現在、イノベーションプロジェクトには数百、数千の実験が欠かせない。そのどれもが同一の目標を持っている。すなわち、一連のテストを行うことにより、あるアイデアが顧客のニーズや問題に応える上で有望かどうかを学ぶことだ。

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