2010年9月号掲載
佐藤可士和のクリエイティブシンキング
著者紹介
概要
携帯電話のデザインや企業のブランディングなど、多彩な活動を行うアートディレクター・佐藤可士和氏。氏の生み出すアイデアは、時代が求める感覚を的確に掴み、クライアントの躍進を支えている。本書はその氏が、「クリエイティブシンキング(創造的思考法)」について語ったもの。創造的な思考力の高め方、アイデアを生み出す時の勘所などが明らかにされる。
要約
クリエイティブマインドを作る
僕の職業は、アートディレクターである。
デザインをはじめとする表現力を駆使して、企業や商品のコミュニケーション戦略からブランディングまでを形にしていく。
感覚で作品を作る、アーティスト的な仕事と思われがちだが、実際は違う。クライアントの言葉にならない熱い思いを引き出し、社会に伝えるための的確な方法を見つけ、具現化する仕事である。
こうした仕事の性質上、常に相手の悩みを丁寧に拾い上げ、本質を見極め、課題を発見し、解決していくことが求められる。その時に必要なのが、“クリエイティブシンキング”である。
クリエイティブシンキングとは「創造的な考え方で、問題を解決していくこと」で、広告だけでなく、営業をはじめ、あらゆる仕事に活用できる。
とはいえ、いきなり使いこなすのは難しい。まず大切なのは、“クリエイティブマインド”を作ることである。
疑うことがクリエイティブの出発点
クリエイティブマインドを磨くための方法はたくさんあるが、最も重要なのは「そもそも、これでいいのか?」という疑問を抱くことである。
慣習や業界の常識といった“前提”を疑う気持ちがないと、物事はダイナミックには変化しない。
まずは常識とされている事柄に疑問を抱き、冷静な眼で様々な角度から観察し、検証してみることが、クリエイティブシンキングの原点になる。
アートの世界では、「美とは何だ、アートとは何だ」と、いつの時代も問われ続けている。
ルネサンス以降、写実的な描画法に疑問を抱くところから印象派が生まれたり、キャンバスという枠の中の表現を脱却するところからコンセプチュアルアートが生まれたりと、前提を疑う創造的思考から新しいアートの流れは生まれてきた。