2010年9月号掲載
わが経営に刻む言葉
著者紹介
概要
1964(昭和39)年、33歳の時にウシオ電機を設立し、約半世紀にわたって経営の第一線に立ち続ける同社会長・牛尾治朗氏。その氏が執筆する、月刊誌『致知』の「巻頭の言葉」をまとめたものである。経済同友会代表幹事をはじめ多くの公職に携わるなど、日本を代表する財界人である氏が、経営者として生きる中で、心に留め、大切にしてきた言葉の数々が綴られる。
要約
経営に刻む言葉
いかに経営すべきか、どう生きるべきか…。
そうしたことを考える時、示唆を与えてくれる言葉がある。そのいくつかを紹介すると ――
素に在りて贅を知る
この頃、強く感じていることがある。それは、経済の座標軸が変わってきている、ということだ。
1つには、消費者が人間として求める理想像を代わりに実現してくれる企業が好感を持たれるようになった、ということがある。
公害問題に具体的に対応する企業、地球環境を大事にする企業等々、人間の良心に基づいた経営を行っている企業に好感が集中している。
また、高齢化の進展も、経済に大きな影響を及ぼしている。
今のお年寄りの消費には、明確な特徴がある。「いいものを、ちょっとだけ」というものだ。
この消費傾向を追求していくと、真に心地よい生き方を人々が求めるようになって、やがては精神的なものに重きを置くようになっていく様子を窺うことができる。
「もので栄えて、心で滅びる」
高度成長の頂点の頃、薬師寺管主の高田好胤さんが、こう警鐘を鳴らされたことがあった。
高度成長期に失ってしまった大切なものに人々が気づき、それを取り戻そうとする動きが、今の消費傾向に表れているともいえる。そしてこの流れから、新しい文化が生まれようとしているのだ、と私には感じられる。