2010年11月号掲載
ドラッカー・ディファレンス クレアモントの授業
Original Title :The Drucker Difference:What the World's Greatest Management Thinker Means to Today's Business Leaders
- 著者
- 出版社
- 発行日2010年9月2日
- 定価1,980円
- ページ数221ページ
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概要
ピーター・F・ドラッカーが教授を務めていたクレアモント大学院大学には、「ドラッカー・スクール」というマネジメントスクールがある。本書は、その必修科目である「ドラッカー・ディファレンス」を紹介したもの。同大学の教授陣が、マネジメント、リーダーシップなど各自の専門分野を、ドラッカーの思想に沿って講義した内容を生き生きと再現する。
要約
教養としてのマネジメント
「ドラッカー・ディファレンス」。本書のタイトルは、クレアモント大学院大学ドラッカー・スクールの必修科目である、同名の講義に由来する。
この講義は、2005年に永眠したドラッカー教授の所説で、特に組織と個についての知的遺産を継承することを目的とする。
各講義はいずれもドラッカー教授の知識体系に準拠し、論を展開している。例えば ――
* * *
2008年の暮れ以降、マスコミはアメリカの企業社会に対する大衆の失望を報じ続けた。
ウォール街は、政府の金融機関の救済に抗議するデモに溢れた。一方、GMやフォードのCEOたちは、自動車産業を税金で救済してもらうべく、社用ジェット機でワシントン入りした。これは多くの人に、「感覚のずれ」を示すものと映った。
超高額報酬、不当報酬…。道徳のかけらもない企業人に世論は激昂した。今日、企業の役員室は、何か致命的に重要なものが欠落したままのようだ。
マネジメントとは教養である
ドラッカーは、マネジメントの側に、人間性、価値観、道徳性への理解、彼のいうところの「善悪の観念」がなければならないと語った。
米国社会の企業観の現状を踏まえるならば、今こそドラッカーの視点に立って、「企業幹部が価値ありとすべきものは何か、それはなぜか」を考えることが緊急に求められているというべきだ。
「マネジメントとは教養である」とするドラッカーは、こう言っている。
「マネジメントの地位にある者は、心理学、哲学、倫理学、経済学、歴史など、人文科学、社会科学、自然科学の広い分野にわたる知識と洞察を身につけなければならない。それらの知識によって、病人の治療、学生の教育、橋の建設、使いやすいソフトの設計や販売において成果を上げなければならない」(『新版マネジメント』)