2021年1月号掲載
マネジメントへの挑戦【復刻版】
著者紹介
概要
1万社近くの企業を指導し、「日本のドラッカー」と呼ばれた一倉定。彼は、従来の経営論を“きれい事”と否定し、机上の空論ではなく人間に立脚したマネジメントを展開した。そんな“一倉マネジメント”の要諦をまとめたものだ。1965年に刊行された書の復刻版だが、経営者を震撼させた「反逆の書」の内容は、今も色褪せない。
要約
きれい事のマネジメントへの挑戦
これは挑戦の書であり、反逆の書である。「きれい事のマネジメント論」への抗議なのである。
一個の人間が、懸命にマネジメントを学び、これを実務の上に具現しようとした。しかし、マネジメント論に忠実であろうとすればするほど、現実との遊離が大きくなっていく。
迷いと苦悶のうちに、多くの優れた事例や失敗の教訓、そして自分の経験を通じて段々にわかってきたことは、いい結果を得た考え方ややり方は従来の学問的なマネジメント論とはかなり違うものである、ということである。
これから述べる1つ1つの主張や見解は、事実と私の経験に基づいたものであり、新しいマネジメント論への革新に役立つことを願うものである。
計画とは何か
「計画はマネジメントの基本である」とよくいわれる。では、いったい計画とは何か。
計画とは、「将来に関する現在の決定」(ドラッカー)である。くだいていえば、「将来のことを、あらかじめ決めること」である。
この定義には、よく考えてみると意味深長なものがあり、その意味を理解することにより、計画に対する我々の態度がハッキリと決まる。
それは、「あらかじめ決めてしまう」のであるから、当然のこととして「そのとおり実施する」という考え方が導きだされてくるのである。このことをシッカリと認識していないと、マネジメントは混乱するばかりである。あくまでも「そのとおりやる」という責任がある。
この責任感が、計画の第1の要件である。
次に、「そのとおり実施する」のであるから、計画以上でも、以下でもいけない。どこまでも、“計画どおり”というのが正しい態度なのだ。
“計画に具備すべき条件”のウソ
世にいわれている“計画に具備すべき条件”とかいうのがある。「実現可能なものでなくてはならない」「ムリとムダがあってはならない」「科学的なものでなくてはならない」などである。