2010年12月号掲載
ゴールドマン・サックス研究 世界経済崩壊の真相
- 著者
- 出版社
- 発行日2010年10月20日
- 定価825円
- ページ数206ページ
※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。
※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。
著者紹介
概要
世界経済に大きな傷跡を残した、2008年のリーマン・ショック。この人類史上最大のバブル崩壊を招いたのは、ゴールドマン・サックス(GS)をはじめとするウォール街の投資銀行だ。かつては理想的な投資銀行だったGSがなぜ、世界経済を混乱に陥れるような強欲な企業に変質したのか。元社員が、その足跡をたどりながら、今回のバブル崩壊を今一度振り返る。
要約
強欲資本主義は死なず
ゴールドマン・サックスについて語るというのは、正直、辛いものがある。というのも、1984年から7年間、私が仕事をした職場だからだ。
当時の同社は、素晴らしい会社だった。本来の投資銀行業務を柱に、将来性のある企業を探し出し、資金調達や企業買収による成長を支援し育成する。そこに現実のビジネスの根を持っていた。
だが、90年代半ばから、ウォール街は大きく変質を遂げていく。かつては実業をその土台とした資本主義が、金融資本主義、強欲資本主義へと変貌する。ゴールドマンはその尖兵となった。
そして、ウォール街の変質は世界経済を根本から変えてしまった。今も続く先の見えない世界大不況へと突入させてしまった元凶ともいえるのだ。
リーマン・ショックが起こった時、世界各国の政府・中央銀行が基本的にとった姿勢は、大銀行を救済するということであった。
これに対し、大金融機関の幹部は、その救済資金を自分のボーナスとした。また、ほとぼりが冷め、市場で増資できるようになると、これらの金融機関は公的支援資金を返済し、まるで何もなかったかのように巨額のボーナスを支払い始めた。
さらに「懲りない連中」は、今度はこんな証券化商品を生み出した。
早く死にそうな生命保険保有者のところに行き、その保険を解約料より高い価格で買い取り、満期まで保険料を支払う。つまり、早く死んでくれればくれるほど、より儲かる。こうした生命保険を束にして、証券化商品として売り出したのだ。
「人が早く死んだら儲かる」という金融商品をあなたはどう考えるだろうか。彼らの倫理観は、もはや表現しようもないほどに狂っている。
今、世界中の政府で金融機関規制法案が審議されている。米国では2010年7月に、今後の金融規制の骨格となる法案が議会を通過した。
彼らは、自ら行動を改めるということは決してしない。この世に存続させるとするならば、徹底した規制でその行動を制限するしか方法はない。