2010年12月号掲載
ドケチ道 会社を元気にする「生きたお金」の使い方
著者紹介
概要
岐阜県に本社をおく未来工業(株)は、電気、紙などの節約を徹底しており、「ドケチ」なことで有名である。しかし、何に対してもケチというわけではない。社員の給料や、提案に対する報奨金など、社員をやる気にさせることには気前よくお金を使う。こうした経営により、同社は創業以来赤字なし。この「ドケチ」と「反ドケチ」を両立した経営について、創業者が語る。
要約
日本一「ドケチ」な会社
私が創業した未来工業は、岐阜県に本社がある電気設備資材のメーカー。住宅のスイッチの裏にある「スライドボックス」で約8割のシェアを持ち、パナソニック電工などの大手を圧倒している。
ウチのような後発の零細企業が、大手との競争に勝ち抜くための作戦の1つが「ドケチ」だった。
ドアノブなし、コピー機は本社に1台だけ
「なんだか、暗いオフィスですね…」。当社に初めて来ると、そんな本音をこぼす人がいる。
当然だ。昼間は廊下の蛍光灯のスイッチを切っている。廊下で仕事をする人はいないから、多少暗くても問題ない。日差しが入ってくるオフィス席も、日没までは蛍光灯は使わない。
また当社では、ドアノブは取り外されている。ドアノブがあると、それを回さないと開けられないからだ。その時、両手が荷物でふさがっていたら、それらを下ろさないとドアが開けられない。
そこで使われるムダな時間を全社員分で合計し、社員の給料に換算したら、かなりの大損になる。
そこで、ドアの多くを改造して、身体で押せばドアが自然に開くようにした。
そして、コピー機は約330人の社員がいる本社に1台だけ。そのせいで社員がイライラして仕事が手につかなくなる、といったことは一度もない。
コピー機など会社に1台あれば十分だ。携帯電話が手元にあれば、たいした用もないのに使いたくなるのと同じで、コピー機がたくさんあれば使いたくなる。当然、ムダなコピーが増えるだけだ。
皆が「横並び」でやることに、お金は出さない
会社も社員も、取引先などには、年賀状や暑中見舞いは出さない。お中元やお歳暮も贈らない。
関連の仕入れ先、得意先は数千社規模。ウチが贈らなくても相手はまず気づかない。